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第41話 眼鏡
眼鏡は、誰かに踏まれたのか階段下で
バキバキに壊れていた。
どうせ見ないようにしているものの方が多いのだから、
眼鏡なんかなくたっていいのだけれど。
「壊した...ですって?」
母は片眉をぴくりと上げた。
硝子は心臓が凍り付くのを感じ、俯いたまま両手を握り締めた。
「どこまでグズなのよ!!!出来損ない!!!
高校生にもなって自己管理もできないの!!?
どれだけ迷惑かければ気がすむの!!あんたは!!!」
ヒステリックな叫び声がリビング中に響き渡り、硝子は目をぎゅっと閉じたまま耐えていた。
言葉が、突き刺さる。
鋭い針のように身体を突き刺す。
「落ち着きなさい」
「あぁぁ...真一さん、わたし、わたし..」
横から出てきた夫に肩を抱かれ、
母はおいおいと泣き始める。
「行きなさい硝子。」
「.....はい」
硝子は静かに頷いて音も立てずに自室へと戻った。
二階の廊下に真姫が立っていて、硝子を見てはニヤニヤ笑った。
「眼鏡壊すなんて小学生かよ」
両親の前ではいい子ぶっている真姫は強い言葉で嘲笑してくる。
硝子は何も言い返さず、さっさと戸を開けて中に逃げ込んだ。
しんと静まり帰った暗い部屋は、いくらか安心できる。
身体中の力が抜けて、布団に顔を突っ伏した。
"殺していればよかった。"
そんな顔をしていた。
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