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第44話 新品
誰も悪くない時は大体自分が悪いのだ。
しかし、恭介はいつも通りに弁当を二人分作ってきて
他愛のない話をし続ける毎日。
新しい眼鏡も似合いますね、と言った。
それを受けてなんだか、むずむずした変な気分になるのだけど。
何も思わないように、する。
今日も、煙が昇っている。
数年振りの新品の眼鏡は視界良好過ぎて、逆に落ち着かない。
短い休み時間に入ったが、硝子は目が疲れてしまってノートを広げたままぼうっと消されていく黒板を見つめていた。
「おーい雛瀬」
急に名前を呼ばれ、バタバタと紙が揺れる音がして
硝子ははっとなり横を向いた。
そこには同じクラスの赤川茶々が立っていた。
名前と顔は記憶にはあるが全く喋ったことのない生徒だった為
思わずぽかんと彼の顔を見上げてしまう。
「大丈夫か?ぼーっとしてんなぁ自分」
茶々は面白そうに歯を見せて笑う。
その片手はずっと紙を持っていて
どうやらこちらに差し出されているようだった。
「あ、す、すみません」
硝子は慌てて紙を受け取った。
彼はもう片方にまだ紙の束を持って居て、
どうやら配って歩いているらしい。
何かのプリントらしかった。
夏休みの..というような文字が見えたが硝子はすぐに折りたたむふりをして俯いた。
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