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第51話 趣味

「..赤川さん..今まで全部一人で書いてたの?」 「んーまぁ。おかげで読者ゼロ?ていうか茶々でいいよー」 彼はそういってどこか呆れたように笑った。 写真も撮って記事も考えて自分で書くなんて相当大変だったに違いない。 感心しながらも硝子はペンを進めた。 「ひなっちゃんはさぁ見た目通り大人しいけど趣味とかないの?」 茶々は1秒も黙ることなく今度はこちらに話しかけてくる。 自分のことを聞かれ思わず顔を上げると茶々は向かいの席でたくさんある写真を見比べているようだった。 「え...趣味....?」 「そー。あ、ちなみにウチは写真と張り込みと情報取集!だから今趣味真っ最中」 茶々はそう言ってはこちらを見てにやりと笑った。 底抜けに明るい性格のような茶々に硝子は眩しささえ感じまた手元を見下ろす。 「これといって特にはないかな....」 「なるほど。これといってとくになし」 茶々はそう言いながら片手で手元のメモ帳に書き留めている。 彼がいう趣味とはこのことなのだろうか。 「じゃあさじゃあさ無人島に一つだけ持って行くとしたら何持ってく?」 「..え..無人島?」 意味のわからない質問に硝子は思考がショートしそうになる。 「そんなこと考えたこともなかった...」 「マジで?人生何が起こるかわからんよー備えあれば憂いなしってね 今のうちにシミュレーションしとかないと」 「..うーん....」 「まあ例えば大事なものとかさ」 「大事なもの..」 硝子は少し考えたが、大事なものなど持っているはずもなく。 眼鏡かな?でも眼鏡がなくたって無人島なら困らなさそうだなぁ。 大事なもの、大事なもの...。 そうやって考えていると思い浮かんだのは、恭介の弁当だった。 「..お弁当....」 「お弁当か!遠足かよ〜」 思わず声に出してしまうと、茶々は面白そうにケラケラと笑って書き留めている。 そんなつもりはなかったのだが今更訂正も出来ず、 硝子は恥ずかしくてまた文字を書き始めるのだった。

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