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第56話 隠された
「それ貸してください」
硝子の腕の下にある紙を指差すと彼はつられて自分の手元を見下ろし、え...えっと、といいながら
何故か隠すように自分の方へと引き寄せた。
恭介はがつんと傷付き笑顔のまま固まった。
どうして自分には見せてくれないのか。
茶々が良くて何故俺はダメなのか。
果てしなく絶望しかけた恭介はしおしおと腕を下ろし真っ白に燃え尽きたポーズでうな垂れた。
「.........俺....迷惑?邪魔?ウザいですか?消えたほうがいいですか?」
「そ、そんなことないよっ、
急でびっくりしたし...その...」
硝子は慌てて言い訳してくるが恭介はちらりと横目で彼を見た。
「いずみくんも手伝ってくれるなんて、思わなかったから...」
そわそわと硝子は小さな声で呟き、
机の上の紙を両手で恭介に差し出してきた。
「お願い、します..」
恭介はなんとか立ち直り、その紙を受け取る。
そこには美しい文字が並んでいた。
教科書のように美しい文字の列に恭介は思わず硝子と見比べてしまう。
書く字も綺麗なんてどこまでこの人は尊さを極めているというのだろう。
感動して泣きそうになったが、
先ほど隠されてしまった心の傷はまだ残っている。
こんな美しいものを見る資格はないと思われたのだろうか、そう思うと再び俯きそうになり恭介は机の上に紙を置いてペンを取った。
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