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第67話 誓い
薄らいでいく記憶の中、
まだ、父も母も微笑みかけてくれていた頃。
それでも感じる違和感に、
硝子はあまり喋ったり笑ったりしない子どもだった。
熱を出しても言い出せずに学校へ行き、倒れてしまった時
母親は泣き叫びながら恥を知れと言った。
お前が倒れたりなんてするから
まるで私が、ダメな母親のようではないかと。
その時から硝子はなんでも我慢しなければならないということを心に刻んで
それは貫き通さなければならない事も分かっていた。
こんな風になってしまうのは誰でもなく自分のせいなのだから。
すみません。すみません、弱くて、グズで、役立たずで。
あなたを泣かせるつもりはなかったんです。
謝り続け、やがて真っ暗な夢から呼び戻されても硝子の瞳からは涙が溢れていた。
重たい瞼に狭められた視界は、
絵の具を零したようにぼやけていて
硝子は暫くぼーっとその中を泳いでいた。
なんだか暖かくて、とてもいい香りがした。
「先輩!よかった...」
恭介の声がして硝子は首を傾けるようにそちらを見た。
ぼやけた視界の中誰かが近付いてくる。
顔が近付くとそれが恭介だとわかった。
「...いずみくん..」
「強引に連れてきてしまってごめんね。痛いとこないですか?」
恭介は優しく頭を撫でてくれて
その大きな掌に無性にホッとしてしまいながらも硝子は首を振った。
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