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第69話 ふかふか布団

やがて、ベッドサイドにある机の上に眼鏡を見つけ 硝子はようやく視力を取り戻すことが出来た。 そこは見知らぬ部屋で、今寝かされていたベッドも見知らぬものだった。 あまり物のないシンプルな部屋だ。 硝子の中で最高の寝床は保健室の固いベッドで こんなにふかふかで暖かいベッドになんて寝たことがなかったから、 自分が寝ていいわけがないと床にずるずると降り立っては三角座りをした。 本当は布団を綺麗にしたいところだけれど、 身体が重くて動けない。 ここはどこなのだろう。 もしかしていずみくんのお家かな...。 暫くそのままでいると、静かにドアが開く音がして硝子は顔を上げた。 「先輩!?なんでそんなとこに...」 ようやくクリアーな視界で見ることができた恭介は 制服姿のままお盆を両手で抱えていた。 それを机の上に置くと硝子を抱え上げてまたベッドに戻されてしまう。 「ダメだよ...こんな、いいとこ、に寝られな..」 「...俺のベッドじゃ嫌かもだけど ここしか寝るとこないので我慢してください」 なんと恭介のベッドだったらしい。 なおの事使うわけにはいかなかったが、ベッドに座らされ 無理矢理布団を被せられてしまった。 「この家俺しか使ってないんで。遠慮せずに」 彼はそう言って肩を竦めて笑った。 どことなくその寂しそうな笑顔に硝子はこれ以上わがままを言ってはいけない気がして 黙って従うことにした。

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