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第70話 おかゆ

恭介はお盆を持ってきて硝子に見せてくれた。 「ありあわせで申し訳ないんですが、食べれそうですか?」 お盆の上には湯気が立ち上る白くて柔らかいご飯のようなものや、美しくカットされたりんごや、 なんだかよくわからないが綺麗な色の透明の物体やらが置かれ 硝子は思わずじっと見つめてしまった。 「嫌いなものとか..」 そう言われるがそもそも食べたこともないものもあって 硝子は首を振った。 「食べさせ..いや、でも、いや...しかし..」 恭介は何やらぶつぶつ呟いているが 結局湯気が立ち上る茶碗を手に取りスプーンで一口掬った。 ふうふうと息を吹きかけ冷ましている。 「...では、失礼して...」 彼は神妙な顔でそう言い、スプーンの先をこちらに向けてきた。 硝子は意味がわからず小首を傾げる。 「口開けてください」 「え..っと...?」 彼の言葉に意味がわからないまま硝子は口を開いた。 恭介にスプーンを口へと突っ込まれ 思わずびっくりして避けそうになったが、 食べさせてくれる、ということがわかり その暖かくて柔らかいものを口の中に移した。 お米の味、そして少し塩が効いて、身体に染み渡るような。 暖かいものを食べたのはいつ以来だろう。 「た...食べれそう?」 恭介は何故か息切れしながらも聞いてくる。 また泣いてしまいそうで、硝子は何も言えず俯いたまま頷いた。 よかった。彼はそう言って笑った。

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