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第76話 配達

夕食を終え硝子はさっさと横になって居た。 また恭介に迷惑をかけるわけにもいかないから 風邪だの熱だのは早く治さねばならない。 清一のお下がりで捨てられる直前だった毛布が唯一硝子が持つ寝具で 硝子のいつもの就寝は床の上に横になってそれを被るというシンプルなものだった。 恭介のふかふかベッドを思い出しなぜか、 少し楽しい気分になってしまう。 いずみくんは、王子様みたいにかっこいいけど寝てるところも王子様みたいなんだな、と。 本当にどうして自分と一緒にいたいと言ってくれるのかわからないほど素敵な人で。 こんな楽しい気持ちになる事は許されないのだろうな、とすぐに思い直しごろんと仰向けになった。 昼に寝てしまったせいかあまり眠くない。 そうこうしていると足音が聞こえてきて、やがてこの部屋の前で止まり こんこんと静かにノックされた。 硝子は一瞬、え、と戸惑ったがすぐに起き上がる。 「硝子」 「は、はい」 聞こえてきた声は清一だった。 硝子は慌てて正座をすると、ガチャリと静かにドアが開く。 「....これ、赤川くんって子が持ってきたよ」 「え…」 「早く。ママにバレると破られるよ」 怪しい取引のようにドアの隙間から何かの封筒を差し込まれた。 硝子はそれを受け取った。

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