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第78話 夏休み

今時、テストの成績を名指しで張り出されることなんてなくてよかった。 硝子は期末テストの結果を厳重に折り畳んで 唯一与えられた収納箱である2段カラーボックスの中の 教科書と教科書の間に挟んでおいた。 根性で風邪を治し、また元の生活に戻った後 いよいよ夏休みとやらがやってくるらしい。 浮かれる生徒たちを叱咤するように教師の怒号が飛び交う中 硝子は早くも夏の色をしている空を眺めていた。 「さて諸君...夏休みに入るわけで 無論校内新聞はお休みになってしまいます。」 図書室では一学期最後の新聞を仕上げていつものようにお茶会が開かれていると 茶々が深刻そうな顔で腕を組んだ。 「しかし!我々には町内新聞も担当しているので 夏休み期間中もここに集合してください!」 「はぁ!?町内新聞!?」 恭介が声を荒げて立ち上がる。 茶々は真面目くさった顔で頷き、"ニューにこにこ新聞"という 訳のわからないタイトルの新聞を掲げた。 「このニューにこにこ新聞が町内新聞で、にこにこ新聞が校内新聞です」 「騙しやがって...雛瀬先輩に2倍書かせてたってことか.. 確かにスーパーの特売情報とかよくわからん情報だと思ったが…」 相変わらずの悪徳業者ぶりに恭介は彼を睨むが茶々はによによと笑った。 「あれぇでもいずみん役に立ってたんじゃない? いずみんのお弁当の内容と新聞の特売の情報とのシンクロ率80%な件〜」 「てめえ..弁当の中身まで...」 記者というよりはスパイのような情報網の茶々である。 「まぁ、でも地域のためにこんなのも作ってたなんて ちょっと見直しちゃったわ茶々君」 「えへーでしょでしょ」 「でも広告代でお金取ってるのは解せないわね?」 環先生は笑顔で新聞の一番下の、 "広告募集!1スペース¥500"の文字を指差して微笑んだ。 茶々は慌てて新聞を奪い返す。

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