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第82話 才能
「商店街のポスターか、成る程。
いいじゃない硝子君、書いてみたら?」
環先生は髪を耳にかけながらそう微笑みかけてくる。
彼にまでそう言われてしまうと余計に断り辛くなってしまった。
「大丈夫大丈夫ひなっちゃんならできるって」
「うう....じゃあ…少しだけ…」
硝子は唸りながらも、渋々了承してしまうのだった。
しかし彼らにこう言われると自分なんかでも役に立てるという気持ちになってしまうから不思議だ。
それにしてもこんなにたくさんのお店から仕事を取ってくる彼の行動力は尊敬である。
「....茶々くんは…すごいね…なんでも知ってるし…」
ペンを取りながらも、素直な感想を述べると
茶々は苦笑しながら硝子の頭をポンポンと撫でてくる。
「まーぁね。ひなっちゃんほどじゃないけど」
「....ええ…」
なぜそんな言葉が出てくるのか硝子にはまるで理解不能だったが
彼の言葉に変に勇気付けられてしまう自分もいて複雑だった。
こんなこと言われる価値なんてないのに
まるで彼らの中にいてもいいような、
立派な人間であるような錯覚に、陥るから。
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