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第90話 ひとりって

夏休みに入ってから火曜日しか彼とお昼を食べれなかったから なんだか、嬉しい気持ちになってしまう。 「キュウリやすかったんで、いっぱい入れちゃいました」 「こんなに細かく...すごいね、いずみくん」 「まあ、両親が家空けること多かったので昔からやってたんすよ。料理は 今家に1人なんで、どうせしなくちゃならないし」 「...1人って..一人暮らし?」 「2人とも外国行ってて。 母はニューヨークで..父はどこだっけ、忘れた。」 肩を竦めて笑う彼を硝子は思わずぼけっと見つめてしまう。 かっこいいのに料理も出来てしかも自活しているとは。 なんだか尊敬できる要素しかない。 しかし、一人暮らしとはどんな感覚なのだろう。 硝子は自分の部屋を思い出し、 寝ても覚めてもあの状態なのだろうかと思ってしまう。 引きずり込まれそうな暗闇。 「.....怖くない..?」 恭介は複雑そうな顔をして、えー、と唸った。 こんなに素敵な彼が怖い思いをしているのは良くないことだと思ったから。 「怖くはないですよ。先輩がいるから」 「....ど、どうしてそこに俺が...」 「ふふ、雛瀬先輩のことで頭がいっぱいで怖いとか感じてる余裕ないもん」 「..う...」 相変わらず意味のわからないことを言われ、 硝子は顔が熱くなる気がして麺を食べ進めるのを再開させた。 なんだか胸が苦しい気がした。

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