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第98話 好きなもの
これから作る?
硝子は戸惑いながら彼の笑顔を見つめた。
「....作っても...いいのかな...」
「当たり前でしょ、好き嫌いくらい誰にだってありますよ。」
はっきりとそう言い切った彼がなんだか眩しく見えた。
当たり前、なのだろうか。
彼がそう言うと、そんな気持ちになってしまうから不思議だ。
「....いずみくんはなにが、好き?」
「雛瀬先輩」
「........以外で」
「雛瀬先輩のために料理を作る」
ハキハキと答えていくことには感心するが
おかしな気分になりながらも硝子は唸った。
「うう...他には...」
「んー。…あ、ペンギンとか?」
「え、ペンギン...?」
「可愛くないですか」
ペンギンとはあのペンギンだろうか。
見た目は怖そうなのにペンギンというワードが出てきて硝子は思わず噴き出してしまった。
料理だったりペンギンだったり
中身は実は乙女なのかなと思いながら硝子はくすくすと笑い続けてしまう。
「ふふっ、そうなんだ...なんか意外だね」
「..........。」
「他には.....、いずみくん?」
彼は何故か固まっていて、声をかけても反応がない。
何かまずいことをしてしまったのか、笑ったりして気に障っただろうかと内心焦る。
なにをしても反応がなくなってしまったので、仕方なく硝子はわたあめに齧り付いた。
「...すみません..」
ぽそりと謝ると恭介が勢いよく立ち上がったので、
硝子はびくりと思わず仰け反ってしまう。
「先輩、そんな、不意打ち、ずる.....っ」
「え…いずみくん...!?」
「天使すぎる....尊い..無理....死ぬ…」
彼は何故か泣き出してしまい、
情緒不安定すぎる恭介にわたわたと焦る硝子であった...。
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