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第99話 失恋
「全くいずみんはなにやってるんだ..」
大泣きするヤンキーと焦る硝子を激写した茶々は大爆笑したいのを堪えながら
バレないように広場を後にした。
あの2人の独特なキャラと微妙な距離感は見ていて飽きない。
今後も見守り対象といったところである。
夏祭りの広報担当として無条件に写真を撮りまくる権利を得た茶々は
カメラ片手に夏祭り会場である商店街を闊歩していた。
夏休み中急展開したカップルやらもう乗り替えてしまっているマドンナなどの姿を次々と写真に収め
夏休み明けの校内新聞が実に楽しみ、と
カメラのデータを確認しながらもニヤニヤ笑ってしまい
不意に自分の人間性の低俗さに複雑な気持ちが押し寄せてきてため息を溢した。
しかしすぐにその考えを打ち消して気持ちを切り替えて、
与えられた仕事を一応こなすべく一般の客たちの撮影に取り掛かることにした。
商店街の中にある神社まで来ると夜の部の準備をしているらしく、神社の神主や商店街の青年部たちが作業をしていて
その姿も一応写真に収めながらも歩いていると
神社の裏手の木陰に座り込む不審な男の姿を発見し
茶々は性質的にそちらに近寄ってしまうのだった。
男は木の根本にしゃがみ込み項垂れている様子で
0.2秒程観察すればそのサラサラの髪と立ち上がるとかなりの身長と思われる手足の長い体格は知っている人物だとあたりがつけられる。
「清様、何してんすか」
声をかけると彼は顔を上げ、その美しい顔を無様に赤くして泣いている顔をこちらに向けてくる。
硝子の兄の清一であった。
「あっ…赤川くん!?」
「おぉー名前覚えてくれてたんですね」
清一は驚いたように目を丸くし、慌てて涙を拭っている。
「清様ともあろうお方がこんなところで一体何を…?」
成人男性のガチ泣きを見てしまい茶々は苦笑を溢しながらも
いつもの癖でついつい質問をしてしまう。
「…彼女に突然遠くに行くから別れて欲しいと言われて…
ははは…恥ずかしいところを見られてしまったね」
清一はそう言いながらもまた思い出したのか両手で顔を覆っている。
こんな将来有望なイケメンなのに女に逃げられたくらいで何を泣くことがあるんだろうと思いながらも
茶々は記憶の回路を辿る。
「あれ…あの縦にも横にも大きめな黒ギャルですか…?」
「…いや…その子にははるか昔にフラれたよ…」
「ええ…しかもフラれたんかい…」
「ていうかなんでそんなこと君が知っているんだ?」
彼の前回の彼女も正直もっと色々やりようがあるだろというお相手であったが
短期間で彼女が変わっていくのはさすがの美貌というところだろうか。
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