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第100話 さいのう
「まあまあ。
そんな泣くほど彼女さんのこと好きなら遠距離とかもあったでしょうに」
「いや…彼女はチアガールのユニフォームを着た
スーパーヒーローになるためにシカゴに行くんだそうだ。
だから世界を救うためにも余計なことは考えたくないって…
すごく立派だろ…?だから僕はそれを応援するって決めたよ」
「えー…絶対嘘じゃん…なんだその世界線…」
謎のアメリカナイズの言い訳に茶々は苦笑した。
しかし尚も悲しげに鼻をすすっている姿を見るとよっぽど好きだったのだろうか。
「…変なの…清様ファンクラブ3つもあるのになぁ」
「前から気になってたんだがその清様というのは一体...」
「清一だから清様っ」
「…だから何故…僕の名前を...」
名乗ったっけ、というようにこちらを見上げてくる清一に
過去に浴びせられた声がすぐ耳元で聞こえた気がして
その声を掻き消すように微笑んだ。
「知ってますよ。気持ち悪いでしょ」
清一は不思議そうな顔をしていたが、茶々は自分の性質を呪いながら
彼と反対側に回って木に背を預けた。
昔から知りたいと思ったことはなんでも情報収集に勤しんだし、特に人間のことに関しては殊更敏感に情報をキャッチした。
誰も覚えていないような出来事を鮮明に覚えていたり
たまたま偶然誰かにとって重大な場面に出くわすこともなぜか多い。
人はそれを天性の才能と呼ぶのかもしれないが。
茶々は一丁前に自己嫌悪している、そんな自分を更に嫌悪した。
理解されなくても持ち前の明るさと暴走精神で進んできた。
今更どうということはない。
清一はなんとか泣き止んだのかおずおずとこちら側に出てきて複雑そうな顔をしていたので
茶々は彼を見上げていつも通りによによと笑ってみせた。
「ま、清様だったら彼女の2人や3人またすぐできるって〜
それじゃウチは仕事に戻ります」
「あ…赤川くん…!あの…」
軽くカメラを持ち上げながら再び商店街へ戻るべく歩き出すとすぐに呼び止められる。
「大丈夫ですよ、ひなっちゃんには言わないのでー」
茶々は振り返りながら雑に返答をして足早にその場から去ったのだった。
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