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第102話 一人

どうしよう、今、 とても寂しいかもしれない。 硝子は両手を握り締めて泣きそうなのを堪えた。 もっと早くこうしておくべきだったのに。 彼の優しさに甘えた、溺れた。 アスファルトが水面のように波打ち、またあの女が顔を出す。 きっとこれ以上側にいたら、耐えられなくなる。 そしていつか、こんなに優しい彼を傷付けてしまう。 「俺...は、本当はいずみくんの隣を歩けるような人間じゃない...」 「..どういう意味...?」 「俺は」 彼女の言葉をなぞるように、硝子は言葉を紡いだ。 "グズで役立たずで、恥知らずなお前は 生きているだけで、存在するだけで、迷惑なんだ それを生かしてやってるのに、この世に存在出来る権利を 私が、肯定したのに これ以上なにを望むのか" 殺したってよかったのに。 「俺は、一人でいないといけないから」 それがどんなに強い言葉だったのかは知らない。 悲しい言葉なのかも。

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