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第107話 復讐

「ずっとずっとどうしてやろうかと思っていた。 身体をバラバラにして殺してやろうかとか、 どこかに閉じ込めたまま、存在を抹消してやろうかとか 色々考えたんだよ。でもさっき言った通り、 僕たちは人殺しをしたいわけじゃない... もちろん硝子が悪くないこともわかっているんだ。 清子を壊したのは君じゃない」 真一は硝子の顎の下や耳を撫でてくる。 子猫でも甚振るようなその手付きに、硝子は唇を噛んで耐えていた。 やがて彼の手は硝子の前髪を掻き分け、額に触れた。 「....でも、それじゃあ清子が可哀想だろう? お腹を痛めて君を産んだのに。そのせいで彼女は醜く壊れてしまった.. 彼女がいつか言ったんだ 同じ目に合わせてやりたいって、同じように痛みを植え付けてやりたいって。 だからね」 彼の親指が唇をなぞった。 心臓も血液も凍り付きそうに寒い。 口の中に彼の指が侵入してきた。 「...っ...あ...」 微笑みを浮かべていても、その瞳は笑ってはいない。 そっと彼の手が眼鏡を外してくる。 視界がぼんやりと濁った。 口から彼の指が離れ、代わりに熱く滾った何かが充てがわれた。 「....ッ、..!?」 硝子は一瞬頭の中が真っ白になったが、すぐに逃げようと頭を引く。 しかし彼に頭を抑えられ逃げられない。 「ん、ぐ、っ...!?」 口の中に無理矢理侵入してきた欲望は喉にぶつかり噎せそうになってしまう。 「ほらちゃんと咥えて。歯を立てたらぶつからね」 穏やかな声が静かな部屋に響いた。 硝子は恐怖で泣き出しそうになりながら、ああ。これが罰なのだと悟った。 呼吸を整え、舌を這わせ頭を動かして舐めて、吸って、 息苦しさと胸を突き刺されるような痛みを感じながら 必死にその熱を溶かそうとした。 「相変わらずとろいなぁ硝子は」 彼の両手が頭を掴み、無理矢理頭を動かされる。 息がうまく吸えず、苦しくて涙が頬を伝った。 歯を立てぬように口を開けているのが精一杯だった。 「昔からそうだった、何をするにも人より遅くて 立つのも歩くのも喋るのも、そのくせ目を離すとすぐにどこかに行く 本当に手がかかってさぁ...」 「っ、ん"、ぐ..う」 口の中が液体で溢れて、溺れてしまいそうだった。 だんだん彼の手には力が込められ、髪の毛を毟り取られそうなほど乱暴に扱われる。 「ねえ、硝子。」 欲望が口の中で弾け、受け止めきれずぼたぼたと精液が零れ落ちた。 どろりとした液体が喉の奥に引っかかり、硝子はゲホゲホと咳き込む。 真一はしゃがみ込み、再び硝子の髪を掴んで目を合わせてくる。 ようやく見えた彼の瞳は、冷たく、静かに光っていた。 硝子はその瞳を怯えながらも覗き込んだ。 何も映っていないその瞳の奥は、落ちたら二度と戻ってこれないようで 恐ろしくなって俯いた。 「可哀想に思っているね、僕のことを。 ふふ...僕も壊れてるんだろうね、硝子...これは君のせいだ」 彼の手が硝子の襟首を掴み、投げ飛ばすように床に倒された。 ぶちぶちとボタンを引きちぎられ、素肌を晒される。 「復讐、させてよ。」

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