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第117話 居場所なく。
真一は何事もなかったようにいつもと同じ笑顔を浮かべて
清子が用意した朝食を摂っていた。
清子も、清一も真姫も何も変わらない。
だから硝子も変わらないふりをして、食パン一切れをのろのろと食べた。
自室に戻ろうとすると真姫が来て
「今日友達呼んで勉強会するんだから、出て行ってよ」
とそう言われ硝子は家を追い出されてしまった。
今までは話しかけられもしなかったのに、
わざわざ声をかけてまで追い出されるのは初めてだった。
彼女いわく、自分が家の中に存在していること自体気持ち悪いらしい。
硝子はため息をつきながらも、灼熱の太陽の下行き場もなくうろうろ歩いていて
結局あの鳩時計のある広場に来てはベンチに座ってボーッとする1日となりそうだった。
「...暑い..」
太陽が照りつけ、硝子はかろうじて木の陰に逃れながらも
容赦なく照りつける太陽と蝉の声に目眩がしそうだった。
父親の復讐の痕があるから、夏だというのに長袖を着なければならないハメになってしまったし。
長袖で駆け回っていた茶々の姿が浮かんで硝子は、ふふ、とまた笑ってしまうのだった。
幸い広場には誰もいない。
この暑さの中外で活動しようだなんて人は滅多にいないだろう。
硝子はベンチに体を横たえた。
青い空が広がっていて、遠くに煙が昇っているのが見える。
今日も誰かが空へ向かったのだろうか
それとも不要なものを燃やしているのだろうか。
どっちにしろ行き着く先が同じなら、
どうしてこんな風に生きているんだろう。
硝子はゴロンと仰向けになって木の葉が風に揺れているのを観察する事にした。
緑色が美しい葉っぱは、人間のことをどういう風に見ているのだろう。
そう思うとなんだか全てどうでもよくなってしまう。
だんだん眠気を誘われてうつらうつらと目蓋を閉じかけていると、
緑色の視界に急に誰かの顔が飛び込んできた。
「.....雛瀬先輩」
とてもよく聴きなれた声が放たれて、硝子は目を見開いた。
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