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第122話 彼の大切な場所

関係、あるのだろうか。あるのかもしれない。 「どうしてそこまで...」 「そこまでって...当たり前じゃん、友達なんだし。 それに清様ともあろうお方がそんな顔してるとなんか…」 茶々はそう言って呆れたように笑った。 こんな風に真剣に考えてくれる友達が、硝子にはいたのだ。 清一は不意に、1人で帰る硝子の姿が思い浮かんだ。 ランドセルを背負って重い足取りで、誰とも関わろうとせずに帰る後ろ姿。 彼はずっとそうやって1人でいるものだと思っていたから。 「......その大好きっていうのは..」 「弁当作ってくるレベル?」 弁当。そういえば、彼はいつも昼はどうしていたのだろう。 彼は立ち上がり携帯端末をいじって、やがて画面を見せてきた。 「まあ…男だけどな。」 その画面に映し出されているのは茶髪でピアスのあいたどうみても不良そうな生徒だったがとても愛おしそうに隣を見つめていて その隣には微笑む硝子の姿が写っていた。 2人は並んで座って、何かを書いている。 状況はわからなかったが、その一場面だけで2人が想い合っているのだろうことは明白で。 こんな風に穏やかな表情の硝子は見たことがなかった。 それ故に、今自分達が彼に強いている状況は、 不毛で理不尽で。 「……僕たちは硝子に許されないことをしてしまったのかもしれない…」 「落ち着けって!大丈夫だよ、ウチらに出来ることなら協力するし…」 莫大な後悔についに涙が溢れてしまった清一を茶々は苦笑しながらも慰めてくれているようだった。 「それにいずみんはひなっちゃんの為ならなんでもすると思うよ。 ひなっちゃんも、いずみんのこと多分好きだと思う…」 硝子には大切な人たちがいる。 彼の言葉に、清一は両手を握り締めた。
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