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第126話 会わせたい人

茶々から連絡があったのは、 夏休み終了の1週間前だった。 会わせたい人がいる、と娘のような事を言われ鳥肌が立ったものだが、妙な気を起こす前に、と釘を刺され 今夜にでも雛瀬邸に乗り込む気概だった恭介は仕方なく彼に付き合うことにした。 待ち合わせの喫茶店の前まで行くと、茶々は相変わらずの長袖パーカーで見ているこっちが暑くなってしまう。 「..いずみん寝てないっしょ」 「うるさい。」 目の下にクマを作っている恭介は いつにも増して負のオーラを放ちながら茶々を睨んだ。 「で?誰だよ、会わせたい人って..」 「んー。」 茶々は唸りながらも今来た道を振り返った。 真夏日のせいか商店街はがらんとしていたが、電柱の向こうに隠れるように誰かが立っていて恭介は眉根を寄せた。 「清様早くー」 「あ...ああ..」 電柱の向こう側の人物はおずおずとこちらへ歩み寄ってきて その姿は見覚えがあった。 恭介が思い出そうと目を細めていると彼は、茶々の後ろに隠れるように足を止めた。 「茶々くん..写真よりだいぶ怖いんだけど...?」 「は?写真ってなんだよ」 「あーあーいいからいいから!えーっとこの人ひなっちゃんのおにーさま! でこっちが伊積恭介くん!」 恭介は眉根を寄せながらも、硝子の身内だったと思い出し渋々、ども、と頭を下げた。 硝子の兄、清一もぺこっと小さく頭を下げる。 暫く2人は無言で見つめあったが、ぴょこぴょこと2人の間に茶々が入ってジャンプした。 「もーとりあえず暑いから中入ろうやぁ!2人ともでかいんだよ!むかつくなぁ!」 茶々は笑いながら口を尖らせ2人の腹をペシペシと叩いて先に喫茶店に入ってしまった。 恭介は聞きたいことは色々あったが、その整った顔を睨み続け清一はどこかバツが悪そうに下を向く。 「おいこらー!」 再びドアが開き、茶々に怒られてしまい2人は仕方なく喫茶店に入った。

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