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第128話 理由と罪

「..僕が生まれて、母はすぐ仕事に復帰した その頃は今よりもっと忙しい会社にいたらしく、 帰りも遅かったから、僕は祖母の家に預けられていた。 残業して会社を出たのが深夜近くになってしまったある日... 見知らぬ男に....襲われた。」 刻々と喫茶店の時計が時を刻む。 恭介は目を見開き、彼の話を気の遠くなるような感覚で聞いていた。 「母はずっと黙っていて 妊娠がわかったと同時に父に打ち明けたらしい。 詳しくは、わからないけれど..父は医者として 授かった命を救おうとしたんだと思う。 母もそれに賛同した。 祖母はそれは尊い行いだと、言ったし僕もそう思った..けど 硝子が成長するにつれ彼に対しての風当たりは強くなって 妹が生まれてから、あからさまに..硝子は不当な扱いを受けるようになった。 昔はまだ、普通の家族だったような記憶があって.. でも両親の憎しみも悲しさも僕たちはダイレクトに受け取ってしまうから 何も...できなくて.....」 清一は両手を握り締めたままやがて辛そうに俯いた。 「...それ、ひなっちゃんは..」 茶々が恐々と口を開く。 「知ってる。その、....実の父親が、自殺した事も。 僕が知らないところでも多分散々、言い聞かされてると思うんだ... だから硝子は、自分が全部悪いと思ってる。 自分の存在自体が…悪いって…」 恭介は、全身から血の気が引いていくのを感じた。 ガタガタと身体が震えて、死んでしまいそうだった。 「両親の憎悪はどんどんエスカレートしていって..たんだと思う。 家の中では硝子は、悪者で、 母は平気で詰るし僕たちを必要以上に比べて褒める。 父は、...よくわからないけれど、いつも穏やかな人だから でも多分心の中では相当に恨んでいたんだろうね… だから...いつからかはわからないけど...、 父は硝子を、..犯してる」

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