130 / 151
第129話 背中
硝子の言動の不可解さが腑に落ちた気がした。
「硝子は多分…受け入れてる。何もかもを
受け入れるしかなかったんだ…」
恭介は静かに立ち上がった。
怒っていいのか、嘆いていいのかはわからない。
硝子が怒らなかったのは、怒らなかったのは....!
「それで....」
恭介は泣きそうに眉根を寄せて両手を握り締めた。
悔しくて悲しくて、自分にも腹が立って。
一体、どうやって償えばいいんだろう。
喫茶店の窓の向こうを誰かが走り抜けていくのが目の端に映った。
恭介は反射的に顔を上げ、すぐに見えなくなった後ろ姿に目を見開いた。
「雛瀬先輩....?」
呟くと同時に足が動いた。
喫茶店のドアに向かうと、茶々が立ち上がる。
「いずみん!?」
彼の声が背中にぶつかったが恭介は外へ飛び出していた。
無我夢中で走り交差点に出るが、彼の姿は見当たらない。
幻覚だったのか、と思った矢先また目の端で彼の背中を捉える。
「雛瀬先輩!!!」
叫びながら恭介は彼を追いかけた。
ともだちにシェアしよう!