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第135話 わるい
硝子、お前が出来損ないなのはちゃんと理由があるのよ。
ある日母が泣きながら話してくれた。
実の父親と思しき男の遺書は、
殴り描きの字で、こどもをころしてください、と記されていた。
レイプされて出来たものの存在など間違いで、
誰からも肯定されないものなのだと
母親は穢れた自分が恥ずかしくて惨めで
本当は真一にも子どもたちにも顔向けができないと。
ではどうして自分を産んだのか?と聞くと
彼女は、わからない。そんなの知るものか。と言った。
でも産まれてしまったものを終わらせると、面倒な事になってしまう
ただそれだけのためにお前は生かされているのだから
なにも文句を言ってはいけない。
なにも望んではいけない。
確かに、その通りだと思ったから。
硝子は目を閉じた。
悪いのは全て、自分なのだ。
「……俺は本当は……いなくならなきゃいけないんだ…」
どこまでも沈んでいきそうな心地の中、
硝子は泣くことすらできなかった。
誰にも迷惑をかけずに、雪のように消えてしまえたなら
きっとみんな幸せになれるに決まってるのに。
「....っ、なんだよそれ」
急にドアを勢いよく開ける音が病室に響き渡った。
「ちょ、いずみん」
茶々の声が聞こえ、硝子は再び目を開けた。
つかつかとこちらに近寄ってくる茶髪の人物。
ぼやけた視界の中でもその人物が誰かわかってしまって
硝子は思わず逃げようとしたが、彼に腕を掴まれて
引き起こされると同時に抱き締められてしまった。
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