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第136話 光
「...い...いずみくん......」
「俺はもらってるよ、ちゃんと...
先輩が生きてるだけで、もらってる....!」
彼の泣きそうな声が耳元で聞こえて、硝子はどうしていいかわからずおどおどと彼にされるがままになってしまった。
煙、光。
不意に記憶の断片が思い起こされ、硝子は不思議に思った。
「...雛瀬先輩、俺に笑ってて欲しいって言いましたよね...?
俺は先輩の側にいたい、俺も、雛瀬先輩に笑ってて欲しい。
どんなに楽しくても嬉しくても、そこにあなたがいなきゃ、意味がないんです
あなたがいない世界なんか何の意味もない!!!」
硝子は彼の服をぎゅっと掴んだ。
誰からも肯定される訳がないのに。
まるで一緒に笑って欲しいと言ってくれているようで。
「俺は...産まれる前に殺されるはずだった、から..
出来損ないで、グズで、迷惑しかかけられない...
..だから、何も望んじゃいけない....」
ただ、殺さないために生かされている。
それなのに、知ってしまった。
「望んじゃいけないなんてこと、ない...
いなくなりたいなんて嘘だ
先輩の、したいことは?
雛瀬先輩の望みは何?本当はどうしたい?」
「...、そんなの...」
「...言ってよ、雛瀬先輩、俺には...教えて欲しい
本当のこと、先輩が思ってること....お願いだから...っ
もう隠さないでくれ…!」
歪んだ視界の中、恭介にじっと見つめられて、
硝子は震えながらも口を開いた。
どうしたい、どうしたいか....。
「.....本当……ほんとう、は…」
口に出すのも恐ろしいほど
烏滸がましい考え。
「うん」
それなのに、彼が真っ直ぐな目で聞いてくれるから。
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