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第138話 退院
それから硝子は栄養失調やらなんやらと訝しげな病名を聞かされ
家族の態度も虐待というありきたりな言葉で片付けられてしまった事が
少しだけ、悲しかった。
心のどこかで家が異常なこともわかっていたし
それも仕方ないことなのかもと自分の中で整理が出来ていたから
カウンセリングと称して話を聞かされても
硝子はどこか上の空だった。
ただ、日が経つにつれ煙も見えなくなって
声も聞こえなくなったし、父につけられた痕も消えた。
恭介と茶々は毎日のように病室にやってきていつものように漫才のような会話を繰り返し
学校が始まればその話をしてくれた。
ついに両親は病室に来ることは一度もなく
あんなに縛られていたはずなのに、こんなものか、と呆れてしまうほどだった。
見捨てられたのかもしれないが
あの人たちも許されたかったのかもしれないと思うと、複雑だったけれど。
1ヶ月ほど経ち、硝子は退院した。
いつの間に決まっていたのか
そのまま恭介の家へと行くことになってしまった。
清一があらゆる手続きや手配を行ってくれていたらしく
硝子は戸惑いながらも彼らの好意を否定することもできなかったし
それにあの家にとって自分が存在すること自体が歪みの原因なのだと理解もしていた。
自分の荷物を軽々と片手に持って歩いて行く恭介を追いかけた。
「いー天気だなぁ」
彼はのんびりとそう言いながら、青い空を見上げた。
多分簡単に片付けられるものではない。
未だに罪悪感が胸の中にあって、隙あれば引きずり込まれそうになる。
お前みたいな出来損ない、と常に囁かれているようで。
それでも硝子は、彼の元に駆け寄りたくなってしまうのだ。
ぎゅっと彼の服の裾を掴んだ。
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