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第139話 傲慢な、
「どうしたんですか?雛瀬先輩」
「....ううん..、なんか、...」
「ん?」
「いずみくんとこうしてまた歩けてるの..夢みたいだなって」
もう二度と会わないことで守れると思っていたのに。
離したくない。ずっと側にいたい。
いつからこんなに傲慢になってしまったんだろう。
母が見たらなんというだろうか。
それでも硝子はなぜだか、強くなりたいと思ってしまうのだった。
自分でも、自分なんかでも大事なものを守れるくらいには。
「歩けますよ。ずっとずっと、先輩がそうしたいなら」
恭介はそういって微笑んで、そっと頭を撫でてくれる。
自分がどうしたい、だなんて、考えたこともなかった。
だけれど不思議と嫌な気持ちも怖い気持ちもなくて
硝子は、ふふ、と笑ってしまいながら頷いた。
「ありがとう、いずみくん」
こんな気持ちになるのは、きっとこの人のおかげだ。
恭介は目を見開くと、ごはっ、と言いながらその場にしゃがみ込んでしまった。
「ひ、久々に...きた....」
「だ、大丈夫!?」
「かわい...無理..尊い....」
もらったたくさんを、いつか返せたらいいな。
そんな事を今は強く、思うのです。
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