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第142話 ともだち
それから数日後硝子は学校に復帰した。
胸に残る蟠りを少しでも取り除きたくて、
長くしていた前髪をばっさり切ってしまった。
おかげで視界が良好過ぎて泣きそうだったが、
クラスに入ると真っ先に茶々が気付いて駆け寄ってくれた。
「おお...!?さてはひなっちゃんか!?」
「あ..う、おはよう...茶々くん..えっと色々ご迷惑を..」
髪を切ったとはいえ性格が急激に変わるわけもなく
もごもごと喋っていると茶々は肩を叩いてくる。
「ほんっと心配したんだから!ウチおしゃべりキャラなのにセリフゼロよ!?」
「う..すみません..」
「もー謝らなくていいってばぁ!元気ならそれでいい!」
茶々は相変わらず元気ハツラツと声を上げた。
彼のそんな様子を見ているとなんだか心が明るくなって
硝子は微笑んだ。
「ありがとう...」
そう言った瞬間シャッターを切られる。
「うわ...!?」
「おおお今のヴィーナススマイル!こりゃー約1名に高値で売れそう」
茶々はいたずらっぽく笑って、その笑顔につられてしまう。
「…ひなっちゃんさ、困ったことあったら言えよな
例えばいずみんがウザいとか...少しくらいなら泊めてやれるしいざとなったら…ふふ、ペンは剣より強しっていうしな」
「...うん、ありがとう」
「よしよし。いい子いい子」
初めてできた大切な友達。
それが彼でよかったと思う。
誰とも関わらないでいることは、楽なことなのだ。
一人でいれば傷つく事もないから。
でも、こんな風に想ってくれる人がいるのなら
きっと関わらないでいるのは悲しい事なのだろう。
傷付くことも傷付けることもあるかもしれない。
でもそれ以上に、きっと、大切な何かがある。
最近、そんな風に思えるようになってきた。
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