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第144話 あなたとなら

硝子に引き摺られるようにマンションに帰ってきた恭介は、 溢れる涙と鼻水を拭いながら部屋の中に入った。 「大丈夫..?いずみくん....」 玄関で硝子は気遣うように恭介を見上げてくる。 その可愛さと優しさに恭介は再び視界が潤み、思わず彼を抱きしめた。 「雛瀬先輩、すき..っ」 「う、うん。わかったから泣かないで...」 硝子はそう言いながらそっと恭介の頭を撫でてくれる。 この人が本当に自分のことを好きだなんて。 こんな夢みたいなことあるだろうか! ぎゅうっと彼を抱きしめて、首に口付けようとして 恭介は慌てて身体を離した。 「..ご、ごめん」 また、本能のまま突っ走る所だった。 硝子はきょとんと見上げてきて、その顔を見ているとまたおかしな気を起こしそうで 彼から離れ俯いた。 硝子の状況を知らなかったとはいえ、強姦してしまった。 その事に対して彼が怒らなかったのは、受け入れてくれたからではない。 「…雛瀬先輩の嫌がることはしないって決めたから」 恭介はそう言ってそろそろと彼から離れ、背を向けた。 「いずみくん..、あの、俺...最初は仕方ないことだって思ってた これは罰..なんだって。 でも今は、いずみくんが俺のこと..好きだから、 そ、その...きす...とかしてくれたんだって、わかるから..」 とん、と背中に触れられて思わず背筋を伸ばした。 ダメだとわかっていても触れられると身体が熱を持ち、彼を欲してしまう。 「お...俺......いずみくんとなら、いいよ....」 「へ....」

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