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第10話

『瞳閉じて…』って甘い囁きの後、本條(ほんじょう)さんの顔が近づいてくる気配。 体中が心臓になったみたいにバクバクいってて気絶しそう…。 本條さんとのキスまであと少し…と思っていたら、急に飼育ケースからガサゴソ物音が聞こえ始めた。 何事だろうと思うけど、今いいところだから我慢、我慢…。 そう思ったけど、気にし始めたら余計に気になって全然集中できない。 「許可なくカブ太たちの大事な湊世(みなせ)にキスしようとしたからかな」 本條さんの優しい笑い声。 つられて俺も笑う。 「…もしかしたら、おめでとうって言ってくれてるのかも知れないです///」 カブ太たちには随分と恋の悩みを聞いてもらった。 だから本條さんと恋人になれた事を祝福してくれてるのかも…。 「そうだね、きっとそうだ…」 嬉しいね…って微笑んでくれるから、本当に幸せ。 「キスしてください…紘斗(ひろと)さん」 そっと本條さんの背中に手を添えて体を寄せる。 本條さんにキスして欲しい。 でも、こんなおねだりしてよかったのか、急に不安になった。 本條さんのペースやプランがあったかも知れないのに、俺ってば余計な事を…。 考えれば考えるほど怖くなって震えてしまう。 「怖がらなくていいよ。俺も可愛い湊世にキスしたい。好きだよ、湊世…」 髪を撫でられて少しだけ緊張がほぐれた気がした。 「俺も好きです。紘斗さん…」 そう告げて瞳を閉じると、また本條さんの顔が近づいてくる気配。 唇に触れる温かくて甘くて優しい本條さんの唇の感触。 夢みたいな本條さんとのキス。 今の俺、世界で一番幸せだと思う。 「もっとしたいよ、湊世…」 そう囁かれてまた唇が触れる。 最初は唇同士を静かに重ねるだけのキスだったのに、少しずつチュ…チュ…と、濡れた音がする。 俺も望んだ事だけど、心臓が飛び出しそうなほど恥ずかしい/// きっとゆでダコみたいに真っ赤になってる自信がある。 「続き…してもいい?」 本條さんが俺の顔をのぞきこんだ…。

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