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第15話
「紘斗 さん、お待たせ…」
俺がお風呂から上がると、本條 さんは俺のベッドで横になっていた。
いつもはソファーで本を読みながら待っていてくれるのに。
疲れちゃったのかな…。
近づくと掛布団を丸めて抱き枕にしている様子。
「紘斗さん、何…してるんですか?」
「待ちきれなくて湊世 の代わりに布団を抱きしめてたよ。布団も湊世のいいにおいがするからね」
本條さんは掛布団に顔を埋めてわざと大きく息を吸い込んだ。
「や、やめてください///」
布団やシーツに本條さんのにおいがついてる気がして嬉しくて、ほとんど洗ってないから恥ずかしい…!
「生の湊世のにおいもいいけど、ちょっと熟成された湊世のにおいも格別」
嬉しそうに笑ってなかなか布団を離してくれない。
本気で止めて欲しいと思うけど、もし俺が逆の立場だったらきっと同じ事してるし、同じ事思うはずだから強くは言えない。
それなのに本條さんに抱きしめられてる布団に嫉妬してしまう。
本條さんが抱くのは俺だけがいい。
本條さんの腕の中は、俺の特等席だから…。
「嫌…紘斗さん。布団じゃなくて…俺を抱きしめて…。抱くのは俺だけにしてください…」
自分がこんなに独占欲が強いなんて知らなかった。
こんなワガママを言葉にできる自分に驚いた。
でもきっと、本條さんが好きなのはいい子の俺。
こんなの…困らせるに決まってる。
今の言葉、忘れてください…って言おうと思ったら、腕を引かれて抱きしめられた。
あっという間に俺の体は本條さんの体の上。
「湊世…ありがとう」
おでこに感じる本條さんの唇。
「どうして…お礼なんて…」
俺…ワガママ言ったのに。
布団にヤキモチやいたなんて子供っぽいはずなのに…。
「愛してる湊世のワガママもヤキモチも、俺には特別だからね」
本條さんは上機嫌で俺の髪を撫でる。
「そうだ、これからはお風呂も湊世と入ろうか。ずっと一緒にいれば淋しくないよ」
体の隅々まで俺が洗ってあげる…と、楽しそうな本條さん。
こんな無邪気な笑顔見せられたら、お風呂でもトイレでもどこでも一緒に行きたくなる。
恋人と一緒にお風呂に入るのは俺の憧れ。
恋人ができたら一度やってみたいって思ってた。
でも、明るいところで本條さんに裸を見せるのも、見るのも恥ずかしいかも///
だってきっと本條さん、セクシーな体してると思うから…。
あれこれ妄想していると、本條さんが少し眉間にシワを寄せた。
「でも…困ったな。ずっと一緒にいたら、我慢しきれる自信がないよ。絶対に可愛い湊世が欲しくなる」
そう言ってゆっくり頰を撫でられる。
本條さんに求められてる…。
大好きな本條さんが俺を欲しいって…///
ど、どうしよう…!
俺の体全部が心臓になったみたいに、ドキドキしてる。
体の芯が…火がついたみたいに熱い。
俺も…欲しい。
愛してる本條さんが全部欲しい。
「我慢…しないでください…。俺も…できないから…///」
紘斗さんを愛してます。
今すぐ抱いて…って言えない自分がもどかしい。
心も体も細胞全部が本條さんを欲してるのに…。
「いいの?そんな可愛い事言ったら、今すぐ抱きたくなるよ」
本当にいいの…?と、本條さんの指先がゆっくりと俺の下唇をなぞる。
「はい…、抱いてください…」
俺はやっとの思いで、それだけ伝えた…。
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