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第17話
「湊世 のだから欲しいに決まってる。湊世以外いらない」
本條 さんの手が頰に触れる。
いい…?って瞳で合図してくれるからそっと瞳を閉じる。
本條さんが近づいてる気配…。
ぎゅっと瞳を閉じると静かに唇が重なった。
壊れ物に触れるみたいな丁寧で優しいキス。
思わず瞳を開けると、本條さんも頰を染めていた。
慣れてる本條さんでも照れる事があるなんて…。
「好きだよ、湊世」
照れくさそうに微笑んだ本條さんが、羽毛みたいなキスをしてくれる。
「俺も…好き…///」
俺からも頑張って唇を寄せる。
俺だって、このあふれる想いを伝えたい。
「愛してる湊世に好かれて幸せだよ」
本條さんの整った唇が、俺の首筋や鎖骨に触れる。
そう思うだけで恥ずかしくて気絶しそう。
震えていると優しく手を握ってくれた。
「…怖い?」
「怖いって言うより…恥ずかしくてどうにかなりそう///」
「…どうにかなった湊世も見てみたいな」
微笑みながらおでこや頬にキスをしてくれる。
不慣れな俺のペースに合わせてくれる本條さん。
その安心感がリラックスに繋がっていく。
少しずつ緊張がほぐれてくると、体が素直に反応を始めた。
本條さんの唇の温もりで眠っていた感覚が呼び起こされていくような感じ。
「あっ…本條さん…///」
大好きな本條さんの指が俺の胸の先に触れた。
本條さんは名前で呼んで欲しそうだから、いつもは意識して『紘斗 さん』って呼ぶようにしてるのに、咄嗟に口をついたのは普段の『本條さん』だった。
よりにもよってベッドで2人きりの時に…!
しまった…と思ったけど、今さらどうしようもできない。
「湊世、もしかして…今まで頑張って『紘斗さん』って呼んでくれてたの?」
「えっと、その…」
上手い返しが思いつかなくて、口ごもってしまう。
こういう時、すぐに誰も傷つけずに、事をおさめる言葉を選ぶにはどうしたらいいんだろう。
「…無理させてごめんね。これからは湊世の好きに呼んでくれていいからね。名字でも名前でも…極端な話、『おい』とか『お前』とかでも、湊世が呼んでくれるなら何だっていい」
そう言って、頭をナデナデしてくれた。
「ごめんなさい…。『紘斗さん』って名前で呼ぶのが恐れ多い気がして…」
「恐れ多いってどうして?湊世と俺は平等なはずだよ」
「はい…」
頭ではわかってるけど、本條さんと俺が釣り合ってないのなんて一目瞭然。
自然とそう思ってしまうんだからどうしようもない。
「…だめだね、こんな言い方したら湊世を追い詰める」
上手く話せないな…と切ない表情で俺を見つめる本條さん。
「俺を尊敬してくれるのは嬉しいけど、湊世が湊世自身を卑下しないで欲しい。湊世は俺の宝物。誰よりも何よりも価値があるんだから」
た、宝物…!?
世の中の宝物みたいな人に宝物扱いされるなんて///
『嬉しい』とか『紘斗さんも俺の宝物』とか可愛い事の一つでも言えばいいのに、俺は完全に言葉を失ってしまった。
驚いた俺は、口をパクパクさせる事しかできなかったんだ…。
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