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第11話
九時半を過ぎた頃、玄関からドタドタと忙しない音が聞こえた。どうやら武蔵が帰ったきたようだ。
「榛名さん……!」
相当慌てていたのか、靴が片方まだ脱げていない。
「おまえ、まだ童貞なの?」
武蔵の前に立つと、武蔵を見上げた。
「はい……」
「なんで?」
「……好きな人としかしたくないから……」
ポロリと涙を零しグズリと鼻を啜った。
「その好きな人って誰?」
武蔵は目を丸くし、瞬を見つめている。
「あなたです……」
そう言われキツく抱きしめられた。
「持田さんと一緒にいても、ずっと榛名さんと過ごした事ばかり考えてました。ホテルの前まで行った時、俺がしたいと思ったのは榛名さんでした。その時気付いたんです、榛名さんが好きなんだって。だから、せめて体だけでも繋げたかった。あなたに童貞をもらってほしかった。好きなんです、あなたが……」
涙声の武蔵が酷く愛おしく思え、背中に回した腕に力を込めた。顔を武蔵の胸に埋めると、心臓の早い鼓動が心地よく耳に届く。
「俺も……おまえが好きだよ。俺もさ、今日一緒にいた人とやろうと思ったけど、おまえの顔ばっかり浮かんでできなかった」
瞬の言葉に武蔵は体を離すと、驚いた顔を浮かべている。その顔が余りにも間抜けに見えて、瞬は思わず吹き出した。
「だから、おまえの童貞くれよ」
次の瞬間、体が浮き武蔵に横抱きされていた。
「お、おい、武蔵!」
そのままベッドまで運ばれると、二人はベッドに横たわった。
「これが恋ってやつなんだろうな。好きだ、武蔵」
瞬は綺麗に笑みを浮かべると、
「おまえに出会って、人生変わった気がする」
そう言って武蔵にキスをした。
「好きです、榛名さん。俺、今からあなたを抱いて、あなたで童貞捨てます」
武蔵の低い美声が耳元に感じると、瞬の体が小さく震えた。
二人は唇を合わせながら、互いの服を脱がせあった。
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