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君の体温 第5話(村雨)

 頭が痛い……    息苦しい……  身体が熱い……  誰か……助けて……母さん…… ――大丈夫だよ、傍にいるからね。 「っ……!?」  村雨は、頬を撫でられたような気がして目を覚ました。  母さん!?  ぼやけた視界が徐々にはっきりしてくる。  あぁ……俺寝てたのか……  熱でうなされていたらしい。  全身汗だくで自分でもびっくりするほど息があがっていた―― ***  朝起きると、頭がフラフラして身体が熱かった。    村雨は子どもの頃から身体が強い方で、滅多に風邪をひかない。  その代わりに2~3年に一度は数日間寝込むほどのひどい風邪をひく。    今年がその年かぁ……  数日前から兆候があったので市販の風邪薬を早めに飲んでいたのだが、それでもダメだったらしい。  平熱を遥かに超えた体温計を見ながらため息を吐いた。  職場と春海に連絡を入れると病院に行った。  診察を受けて薬を貰って帰って来たところまでは覚えているが、そこからの記憶がない――  はぁ……今何時だ?……っていうか、今何曜日だ?  部屋の中が薄暗いので、恐らく夜だと思うが……どれくらい寝ていたのだろう。  時間の感覚がない。  時計を見ようと手を伸ばしたが、あるはずの場所に携帯が見当たらない。  仕方がないので気怠い身体に気合を入れて横を向こうとしたら、布団に重みを感じた。  ん?  肘をついて上体を起こすと、ベッドサイドで布団に突っ伏して寝ている春海がいた。  ……あれ?天使かな?そっか、俺死んだのかぁ~……って違うだろっ!!!  熱のせいで頭の中がお花畑かよ。  鈍っている思考を無理やりフル回転させてみたが、春海がここにいる理由がわからなかった。    村雨が寝た時には春海はこの部屋にいなかったはずだ。    いつ来たんだ?  あれ、っていうか俺鍵かけてたよな?もしかして家の鍵開けっぱなしだった?  あ~くそ頭痛い……  え~と……なんだっけ、あぁ、なんで春海さんがここにいるんだっけ?  病院行って……帰ってきて……それから……  あ、俺薬飲んだっけ?  村雨が熱と頭痛と吐き気の中、必死に頭を働かせようと頑張っていると、春海が小さくくしゃみをした。  あぁ……そんなところで寝てたら風邪ひいちゃう……  そうだ、何か上に掛けるもの……と思って探すが、そもそも一人暮らしなので客用の布団があるわけでもない。  村雨は、首の後ろに手を当てて軽く掻くと、小さく息を吐いた。 「汗臭くてごめんね?」  呟きながら、春海をベッドに引っ張り上げた。    店を閉めてから来てくれたのかな……  念のためベッドサイドに置いてあったマスクをつけて、春海の隣に横になった。  いろいろと気になることはあるけれど、それよりも今はただ春海がここにいることが嬉しかった。  熱のせいで身体が熱い。  汗をかくほど熱いのに寒い。  朦朧とする意識の中、隣に眠る春海の体温が心地よかった。 「来てくれてありがとう」  ふっと笑ってマスク越しに春海の頭にキスをすると、背を向けて目を閉じた――   ***

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