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君の体温 第9話(春海)
「ごちそうさまでした」
「食欲はあるみたいですね、良かった」
空になった器を見てちょっとほっとする。
「さてと……ちょっと風呂入ってきます」
「はい……って、お風呂っ!?」
食器を片づけようとしていた春海は、村雨の言葉に耳を疑った。
「ん?はい、お風呂ですけど?」
「なんで!?」
「なんでって……しばらく入ってないし、汗で気持ち悪いから……」
「ちょちょちょっ!!!ダメですよっ!!熱下がったばかりなのに、お風呂なんか入ったらまた上がっちゃうでしょ!?」
部屋から出て行こうとしていた村雨をベッドに連れ戻す。
「大丈夫ですよ~。3日も寝てたんだから、さすがにもう上がらないですよ」
村雨が手をひらひらと振りながら、へらっと笑う。
「何言ってるんですか!!3日も高熱が続いたんだから、体力も落ちてるし、せめて後一日は様子を見ないと……」
「え~……ダメ?」
小首を傾げて春海を見上げてくる姿は可愛いけれどもっ!!!
くっ……ここで流されるわけにはいかないっ!!
「そんな顔しても、ダメですっ!!……まったくもう、ホントに照子 さんが言った通りだ……」
「……え?照子?」
「あ……っ」
春海は思わず口を押さえた。
「照子ってもしかして、俺の伯母の?え、なんで春海さんが伯母のこと知ってるんですか?」
「あの……夕方来た時に村雨さんの伯母さんと鉢合わせちゃって……それで――」
***
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