26 / 89
Storm has arrived from England! 第25話(春海)
フィアンセって何!?一年間もマリアと一つ屋根の下ってどういうこと!?
叔父さんは自由奔放な人だってことはわかってたけど……こういう事はせめて事前に話してくれてもいいんじゃないの!?
あ~もう……村雨さんの荷物どうしよう!!っていうか、村雨さんに何て言えばいいの!?フィアンセと暮らすので村雨さんは家に帰って下さいって?あり得ないでしょ……
最近は半同棲状態なので、細々とした村雨の荷物が増えている。
そんなちょっとしたことに幸せを感じていた矢先の出来事だった。
まさかマリアが自分と結婚する気でいたとは……
春海の中ではマリアは幼い少女のままだ。中学生くらいになると、勉強が忙しいからと叔父についてくるのも年に一回程になっていたし……
叔父には、いつかは村雨とのことを話そうと思っていたけれど……こんなタイミングでしかもこんなにいくつもの厄介事を引き連れてくるとは想定外すぎる!!!
あ、でも、いっそ村雨さん と付き合ってるって話したら、マリアも諦めがつく?
そうだ、その方がいいかもしれない。隠しきれるものじゃないし、そもそも、話すつもりだったんだから隠す必要なんてないんだし……マリアのあの様子じゃ、適当な誤魔化しではなかなか諦めないだろうし……
村雨の荷物をまとめて春海の部屋に運んでいると、携帯が鳴った。
「はい!!」
「あ、春海さん?今大丈夫ですか?」
「むむ村雨さん!?」
「はい、村雨です」
「む……村雨さぁああああああああん!!」
村雨の声にほっとして、思わず情けない声が出た。
電話の向こうで、村雨がクスッと笑った。
「どうしました?なにかあったんですか?」
「あの、あの……実は……」
ついさっきまで、何て説明すれば……とか考えていたはずなのに、村雨の声を聞いた途端、全てぶちまけていた。
叔父とマリアのことをなるべく手短に説明する。
イギリスに叔父がいることは以前話してあったので、叔父については問題なかったが……
「フィアンセ……ですか……」
村雨がさすがに戸惑った様子で言葉を詰まらせた。
「あの、でもわたしは本当にそんなことになってるなんて知らなくてっ……っていうか、わたしにとってはマリアは可愛いいとこでしかなくてですね!?全然そういうんじゃ――……」
「大丈夫、わかってますよ。でも、そうか~……その子は俺のライバルってことかぁ……」
「ら、ライバル!?わたしが好きなのは村雨さんだけですよ!?」
言い訳がましくなってしまったとしても、誤解はして欲しくないので、必死に弁明する。
「ふっ……はい、ありがとうございます。ん~とりあえず……俺も今日は早めに帰るから、二人に話すのは夜まで待ってもらっていいですか?俺がいた方がマリアちゃんも納得するかもしれないし――……」
「はい……すみません……」
「なんで謝るの?俺たちのことでしょ?むしろ俺は春海さんが相談してくれて嬉しいですよ」
「っ……はい……ごめんなさい……なんだか急にいろいろあったから混乱しちゃって……」
「大丈夫ですよ、俺がついてますから。……(あ、はーい!今行きます!!)……すみません、ちょっと呼ばれたんで行ってきます」
「あ、はい。電話ありがとうございました」
「春海さん、愛してますよ!それじゃまた夜に――」
「へ!?あ、ええ?あ……はい!!」
あ……愛してますよって!!村雨さん職場からの筈なのに……!?
びっくりして、ちゃんと返事できなかった……私も!って言いたかったな……
若干へこみながらも嬉しくて顔が熱くなる……
急な出来事に混乱して動揺していたのだが、村雨の落ち着いた声音と言葉になんだか安心した。
何気ない村雨の言葉に救われる。
大丈夫……わたしには村雨さんがついてくれてるから大丈夫だ……!!
一つ深呼吸をして、部屋の片づけを始めた――……
***
ともだちにシェアしよう!