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Storm has arrived from England! 第37話(村雨)

「それで、さっきのスザンヌの話ですけど……」  村雨は、春海の入れてくれたハーブ茶を飲みながら、スザンヌとの話の内容を春海に話した。  スザンヌはとてもおしゃべり好きらしく、話があちこちに飛んでなかなか本題にたどり着かなかったのだが、どうやら、春海の叔父が昨夜春海にあんなことを言った理由を知っているということだった。  そのためには、昔話をしなければいけない……と、叔父とスザンヌの過去の話もしてくれたのだが、それがやたらと長かった……  亮介は春海に「自分もいろんな人と付き合った。男性とも少しそういう雰囲気になったことはある」と言っていたのだが、少しどころではなかった。  つまり、亮介にも彼氏がいたことがあるらしい。  しかもその彼は、スザンヌの前夫で、マリアの本当の父親でもある。   「えっ!?ちょちょっ!!待って下さい!!どどどどういうことですか!?」  春海が手を前に出して村雨の話を中断した。   「まぁ、驚きますよね。そこらへんもちゃんと話すからちょっとだけ我慢して聞いて下さいね」 「あっ、すすすみませんっ!!!ちょっとびっくりしちゃって……」 「わかりますよ。俺も聞いた時は理解が追い付きませんでしたからね……えっとそれで、その彼氏のことなんですけど――……」 ***  スザンヌの前夫であるジョージは、同性愛者であることを隠して生きてきた人だった。  厳格な家庭で育ったので、両親に「自分が好きなのは男だ」とはとても言い出せず、親にすすめられるまま家同士の付き合いがあったスザンヌと結婚をした。  結婚して半年が過ぎた頃、ジョージは亮介と出会った。  たまたま共通の友人のパーティーで出会い、意気投合し、友人関係からそういう関係になったのだ。  ただ、二人の間に肉体関係はなかった。  心から愛し合っていたけれども、スザンヌを差し置いて自分だけが愛する人と幸せになることはできないからと、亮介とはプラトニックな関係を貫いた。  亮介はそんなジョージの気持ちを尊重し、友人兼恋人として付き合っていた。  スザンヌは結婚して4年目にマリアを授かった。  亮介は、スザンヌが妊娠したと聞いた時に、この関係に限界を感じジョージと別れる決心をしたのだが、亮介に別れを切り出されたことにショックを受けたジョージは、普段呑まない酒を呑み、酔っ払って歩いているところを金目当ての暴漢に襲われて亡くなった。  亮介は、ジョージの葬儀の日、スザンヌにジョージとの関係を話し、「ジョージがしんだのは自分のせいだ。お腹の子から父親を奪った償いは一生かけてするから許してくれ」と頭を下げた。  スザンヌは、そんな亮介を見て、「じゃあ、この子を一緒に育ててほしい。私と結婚しろとは言わない。ただ、同じ人を愛していた者同士、彼の忘れ形見を一緒に愛情を持って育てて欲しい。そして、この子が大きくなったら、あなたが知っている彼のことをたくさん話して聞かせてあげてほしい。もちろん、恋愛はお互い自由。あなたに新しいパートナーができることは私も嬉しいから、遠慮せずにまた恋をしてほしい」と言った。  亮介は、最初はスザンヌの言うように父親の知人として近くで見守るだけのつもりだったが、ジョージの浮気相手だった自分を一つも責めることなく、お腹の子を一緒に育てて欲しいと言ったスザンヌの(したたか)さと慈悲深さに感動し、彼女のことを好ましく思った。  それに、亮介には恋をしろと言ったくせに自分は再婚する気はなく一人で子どもを育てていくつもりだったスザンヌのことが心配で放っておけなかった。  要は、スザンヌに惚れたのだ。  亮介は元々恋愛対象が女性だったこともあり、スザンヌに猛アタックをし、マリアが生まれる前にスザンヌと正式に結婚した。  ただ、スザンヌによれば「そりゃ浮気は腹が立ったけど、仕方ないじゃない。あの時はああでも言わなければ、亮介は今にもジョージの後を追って逝ってしまいそうだったのよ。それに、夫と浮気したくせに私にプロポーズするとかどんな神経してるのかしらって思ったけど、あまりに必死だったから折れたのよ」ということらしい――…… ***    はぁ~……(なが)っ……  一通り語り終えた村雨は、大きく息を吐いて、少し冷めてしまったハーブ茶で喉を潤した――…… ***

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