40 / 89
Storm has arrived from England! 第39話(村雨)
スザンヌからこの話を聞いた時はさすがに村雨も驚きを隠せなかった。
スザンヌも亮介もジョージも恋愛を拗 らせすぎだろっ!!
村雨には三人の気持ちはこれっぽっちも理解できない。
ツッコミ所は満載だったが、誰一人として感情移入できなかった。
どう考えても、ジョージが自分可愛さで物事を曖昧にして二人の優しさに甘えていただけだろう!?
家のことや親のこと、いろいろと背負っているものがあったのだろうが、ジョージはそれを振り落として自分の想いを貫くだけの勇気と決断力がなかったのだ。
ただの優柔不断男。
こんな風に考える俺って冷たいやつなのかなぁ……
あれこれ言ったところで、結局はスザンヌも亮介もそんなジョージのことを愛していたわけだから、ジョージはそれだけ魅力的で素敵な人だったのだろう……
スザンヌと亮介が夫婦になった経緯は……傍 から見るとかなり歪 なものだが、本人たちが幸せなのだから、別に何もいう事はない。
まぁ……俺はもう家族もいないし……背負うものなんて何もない。
ジョージと違って、元々身軽だったから、最初から何も気にせずに春海さんのことだけを考えられたのかもしれないけれど……
***
「I'm home !」
マリアと亮介が帰宅したのは、23時頃だった。
二人して大荷物を持ってベロッベロに酔っ払って帰って来た。
いや、正確には、酔っ払いすぎて帰り道がわからなくなったと電話がかかってきたので、春海と二人で迎えに行ったのだ。
「あぁ、こら、マリア!そんなところで寝ちゃダメですよ!!ちゃんとお布団に入って寝なさい!」
「うぇ~?り~ちゅ~!hahaha!! You are funny face !!」
「はいはい、ほら、こっちですよ。おやすみなさい」
村雨は、春海が酔っぱらってケラケラ笑っているマリアを軽くあしらいながら布団に放り込むのを見て、村雨の誕生日に酔っ払った春海を介抱した時のことを思い出して苦笑した。
「村雨さん?何笑ってるんですか?」
「ふふ……いや、何でもないです」
「叔父さんは?」
「あぁ、トイレですよ――」
亮介は村雨が部屋に運んだのだが、横になった途端に「吐きそう」と言い出したので、慌ててトイレに連れて行ったのだ。
そろそろいいかな?
トイレに亮介の様子を見に行く。
亮介はトイレの床に座り込んで壁にもたれていた。
「村雨さ~ん、叔父さんは大丈夫ですか~?」
「大丈夫だとは思いますけど……もしも~し、生きてますか~?」
「ぅ゛~~も~でましぇ~んよぉ~……」
「じゃあ、部屋に戻りますか。春海さん、とりあえず、洗面器持って来てください」
村雨が亮介を布団に運ぶと、春海が洗面器を持ってきた。
洗面器にビニル袋をかけて、布団の横に置く。
「もぉ~!飲み過ぎちゃだめって言ってあったのにぃ~~!!叔父さん、もし吐くんだったらここに吐いて下さいね!?」
「あ~い……」
「水もここに置いておきますからね!?」
「ん~……」
村雨は、春海の言葉に生返事をする亮介に布団をかけた。
「どうやら今日も話し合いは無理ですね」
「すみません……電話がかかってきた時に、飲み過ぎないように言ってあったんですけど……」
「春海さんのせいじゃないですよ。まぁ、昨日スザンヌにもいろいろ言われたみたいですし、気まずかったんでしょうね」
「そうかもしれませんけど……でも――……」
「ん゛~……George……I hate……t I love you……」
「……え?」
亮介がうなされながらポツリと呟いた。
春海と顔を見合わせて、二人でまた亮介を見る。
「今……叔父さん……ジョージって……」
「そうですね……昨日スザンヌと話して、ジョージのことが恋しくなったのかもしれませんね……」
こんなに飲み過ぎたのは、春海と顔を合わせるのが気まずかっただけじゃなくて、昔のことを思い出したせいもあるのかもしれないな……
『I hate that I love you.』か?『I hate you but I love you.』か?……たしか……『君を愛してる自分が嫌だ。』『嫌になるくらい君を愛してる。』『憎いけど愛してる……』って感じだったかな?
どちらにしても……どうしようもなくジョージを愛していたってことだろ?
結局、亮介にとってジョージのことはある意味トラウマになっているのだ。
愛しても手に入らない。憎いのにそれ以上に愛してる。いまだにジョージを忘れられない自分が嫌だ……
だから、春海と村雨のことが自分たちのことに重なって、あんな言い方をしたのだろう。
「村雨さん?どうかしましたか?」
「ん?いや……また明日、ちゃんと話し合いしてみましょう。ね?」
「はい!」
***
ともだちにシェアしよう!