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Storm has arrived from England! 第40話(春海)

「春海さん、本当に大丈夫?」 「はい、大丈夫ですよ!昨日臨時休業しちゃったんで、今日は店開けないと常連さんが心配するだろうし、お客さんの前では叔父さんも余計なことは言ってこないと思います。話の続きは村雨さんが帰って来てから改めてって言っておきますから、安心してお仕事行ってきてください」 「ぅ~~~……わかりました。また休憩の時にでも連絡しますね。それじゃあ、行ってきます!」 「行ってらっしゃい!」  春海は、まだ少し心配顔の村雨を笑顔で送り出した。  先ほどまで村雨は、昨日話し合いが出来なかったので今日こそちゃんと話し合いをするために仕事を休むと言っていたのだ。  そこまでしてくれようとする村雨の気持ちは本当に嬉しかったが、昨夜の様子だと叔父はかなり酔っ払っていたので、たぶん昼過ぎ、下手すれば夕方まで起きて来ないかもしれない。  起きてきてもすぐにはまともに話なんてできるわけがない。  だから、わざわざ村雨が仕事を休むことはないのだ。 *** 「はい、お味噌汁」 「あ゛~、ありがとう……」  春海は、二日酔いでグダグダの二人を前に、大袈裟にため息を吐いた。 「まったく、二人ともどれだけ飲んだんですか?いくら何でも飲み過ぎですよ!」 「り~つ~!I still have a messed up headache(まだめちゃくちゃ頭痛いよ~)!」 「完全に二日酔いですよ!マリアも、お酒に慣れてないのにそんなに飲んで……って、わたしも人のこと言えませんが……」 「ははは、マスター、まぁまぁそれくらいにしてやんなさい。二日酔いの時は何を言われても頭に入って来ないよ。それより、そのお味噌汁、美味しそうだね。ちょっとわけてよ」 「え?あぁ、いいですよ。朝適当に作ったものなので、先生のお口に合うかわかりませんが……」  案の定、昼過ぎになってようやく起きてきた二人は、店まで下りてきてカウンターで伸びていた。  二人にお説教をする春海を(なだ)めてきたのは、常連客の“先生”だ。  春海は、二人に出したものと同じ味噌汁を先生にも出した。  メニューにはないが、たまに裏メニューとして自分の(まかな)い料理を常連客に出すこともある。  意外と、それが人気だったりするのだ。 「お、しじみが入ってる!いいねぇ、しじみのお味噌汁なんて久しぶりに飲んだなぁ~」 「ちょうど安く手に入ったんですよ。しじみのお味噌汁おいしいですよね~!」 「うんうん」 「良かったらご飯もどうぞ」 「ありがとう」  先生の前にご飯と漬物を出す。  これに焼き魚でもあれば、立派な日本の朝ごはんだ。 「先生、お昼ご飯まだですよね?ついでに何かおかず作りましょうか?」 「ん~そうだねぇ、じゃあ、何か一品作って貰おうかな」 「はい!」  二日酔いの二人にもご飯を出しておいて、春海は先生のために野菜炒めを作ることにした。   「Oh! Miso soup is delicious(お味噌汁おいし~)!」 「それは良かった。マリアは小さい頃から味噌汁好きでしたからね」 「Yes! I can cook miso soup(味噌汁作れるよ)!」 「作れるようになったんですか!?それは凄いですね」 「……マスターは彼女がなんて言っているのかわかるのかい?」 「え?あぁ、はい。一応なんとなくは……マリアも本当は日本語喋れるんですよ。今は寝起きで二日酔いだからちょっと無精(ぶしょう)してるだけです」  英語で話すマリアに日本語で答える春海の図が先生には不思議にうつったらしい。  先生は春海がこの店を継いでからの常連客なので、マリアたちに会うのは初めてだ。 「しゃべれるよ~。私日本語ペラペラよ~!」 「おお、上手だねぇ」 「うふふ、ありがと~!」  若さゆえか、そんなに二日酔いがひどくなかったのか、マリアはもう元気になってさっそく先生と仲良くなっていた。  一方、アラフィフの叔父はまだカウンターに突っ伏して、味噌汁をちびちび飲んでいた。  この様子じゃ、味噌汁を飲んだらまたひと眠りしそうだな。  春海の予想通り、何とか味噌汁を飲み切った叔父は、「もうちょっと寝て来る」と言って、フラフラしながら上に戻って行った――……   ***

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