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Storm has arrived from England! 第43話(春海)

「え、叔父さん明日発つんですか!?」 「うん。チケットが取れたから、明日の昼にここを発つよ」 「だって、2週間くらいいるって……」 「その予定だったけど、早く帰ってハニーのご機嫌を取らないとね……」 「あぁ……」  話し合いが終わって夕食を作っている時に、突然叔父が明日帰る旨を伝えてきた。  スザンヌを怒らせてしまったので、早く帰って直接ご機嫌を取らないとヤバいということらしいが…… 「っていうか、明日帰るつもりなのに今日も飲みに行こうとしてたの!?」  春海たちと話し合いをする気は(はな)からなかったということじゃないか……  呆れ顔の春海に、叔父が苦笑いをする。 「いや、律たちのことは……スザンヌに散々言われて、僕もただ……僕には出来なかったことを事もなげに実現できている君たちに嫉妬していただけだって気付いてさ……でもあんな風に言っちゃった手前、さすがにちょっと気まずかったんだよっ!だけど、謝るつもりだったよ?ちょっとだけお酒の力を借りて……ね?」 「ね?じゃないですよ!もういい大人なんだから、お酒の力を借りずに謝って下さいよ!!何甘えてるんですかっ!!」 「だから、謝ったじゃないかぁ~!!もぉ~!律は怒ったら本当に母さん……律のお祖母ちゃんにそっくりだな~」  叔父がおどけて頭を手で(かば)いながら、少し懐かしそうな目で律を見た。 「わたしがお祖母ちゃんに、ですか?」 「うん、若い頃のお祖母ちゃんにそっくりだよ?写真見たことない?」 「見たことないです……」 「確かアルバムがあるはずだけど……後で探してみようか」 「はい!」  その時、玄関のチャイムが鳴った。 「た~だいま~!」 「ただいま帰りました~!」  村雨とマリアだ。  人懐っこいマリアは昼間、先生をはじめ常連客数人とさっそく仲良しになった。  その内の一人で日本舞踊の先生をしている舞衣子(まいこ)さんに誘われて、先ほどまで踊りのお稽古の見学をさせて貰いに行っていたのだ。  実はこれは春海の案だった。  さすがに、まだ真実を知らないマリアの前でジョージの話をすることはできない。  だから、マリアを自然に話し合いの輪から外すために、春海がこっそり舞衣子さんに2~3時間程踊りの見学をさせてほしいとお願いしてあったのだ。  で、話が終わって、春海が晩御飯を作っている間に、村雨が舞衣子さんの家までマリアを迎えに行ってくれていたというわけだ―― *** 「踊りはどうでしたか?」 「楽しかった~!とっても素敵!!マイコさん、キモノ着てたよ!私も少しだけ踊り教えて貰ったの!でも~……無理!できないね!!なんだか簡単に見えるのにできなかったよ~!」  マリアが春海に覚えたばかりの踊りの動きを少しして見せた後、表情と全身を使って、踊りがどれだけ難しいかを伝えてきた。 「ふふ、日本舞踊は奥が深いでしょう?」 「オクガ……フカイ?どういう意味?」 「ん~……簡単には(きわ)めることが出来ない……って、もっとわからないか……え~と……」  説明の方が難しい言葉が出て来てしまって、マリアが理解できるように説明するにはどうすればいいのかわからず、村雨に視線で助けを求めた。  極めるって英語でなんて言うんだっけ~…… 「まぁ、上手に出来るようになるには時間がかかる。いっぱい練習しなきゃダメだよって感じでしょうかね?」 「ふ~ん……そうね、いっぱい練習しなきゃだめね!」 「そうですね。興味があるなら、留学してる間、舞衣子さんに教えて貰えばいい。一年間あれば、少しは踊れるようになるんじゃないですか?」 「は私が踊るの見たい?」 「あ~そうですね、見たい見たい」 「じゃあ、やってみる~!」  んん?なんだか急に村雨さんとマリア仲良しになってない!?っていうか、今マリア……マ…… 「マ……マサぁあ!?」  思わず素っ頓狂(すっとんきょう)な声が出た。  慌てて俯いて口を押さえるが、もう遅い。  みんなの視線が自分に集まっているのを感じて、春海はその場から立ち去りたい衝動を抑えるのに必死だった。 「え?あ、はい。どうしたんですか?春海さん」  村雨が春海の声に驚きつつも、様子のおかしい春海に気づいて近付いてきた。 「あっ……いえ、あの……マリアが今『マサ』って……」 「あぁ、って発音難しいから、好きに呼んでいいって言ったら、『マサ』になりました」 「へ……へぇ~……」  平静を装って返事をするが、村雨の顔を見ることが出来ない。 「春海さん?春海さんも好きに呼んでくれていいんですよ?『マサ』って呼びます?」 「えっ!?いや、あの……あのっ……わたしは……ごめんなさいっ!!」  春海はうまく言葉が出て来なくて、思わず逃げ出した―― ***

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