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おともだち 第81話(村雨真樹)
後輩である山野がやらかした騒動は、山野が土下座して謝り倒したことで何とかさゆりの誤解も解けて、さゆりからの口添えもあり院長の怒りも静まった。
ただ、騒動の内容が内容だったので、山野の教育係は他の人と交代してもらった。
どちらにせよ、仕事自体はできるやつなので、すぐに独り立ちするとは思うが……
そして真樹は、今回の件の責任という名目で、大量の仕事を押し付けられた。
おかげでまた連日、帰りが午前様の状態だ。
***
「へぇ~、マリアはもうそんなに友達を作ったんですか」
律 が温め直してくれた晩御飯を食べながら、一日の何気ない出来事を報告し合う。
真樹 の方はあまり面白い話などないので、専 ら、律の常連さんの話やマリアの話を聞くことの方が多い。
こうやって律と話す時間が、一番の癒しになっている。
今日は、マリアの大学での交友関係についての話だ。
「はい、男女問わずいっぱい出来たみたいですよ。サークルもいろいろ誘われてるみたいで……基本的には自由にさせてますけど、でも、サークルについてはちょっと待つように言ってあるんです」
「サークルですかぁ」
真樹の大学でもそうだったが、中学校や高校での部活動と違って、大学のサークルというものは、いい加減なものが多い。
もちろん真面目なものもあるが、飲み目的、女目的のサークルがあるのも事実だ。
「真樹さん、明日はお仕事休みですよね?ちょっとマリアの相談に乗ってやってもらえませんか?わたしも大学は行きましたけど、わたしはあまりそういう……サークルとかには入ってなかったのでよくわからなくて……」
「俺もマリアの大学のサークル事情はよくわかりませんが……まぁ一応話を聞いてみましょうか」
「疲れてるのにすみません」
申し訳なさそうな顔をする律に笑いかける。
「休みの日なら構いませんよ」
さすがに仕事から帰ってきて、マリアのあのテンションを相手にするのはキツイ。
だが、マリアも慣れない大学生活で疲れているらしく夜は早めに眠っているようで、平日はほとんど顔を合わせることはなかった。
***
「それで、どんなサークルに入りたいんですか?」
「ん~……わからない!みんな楽しいよ~!って言うだけ」
あ~……それダメなやつじゃないのか?
昼食後のコーヒータイムにマリアに話を振ってみたのだが、どうもイマイチわからない。
「マリアは入りたいと思ってるサークルがあるんですか?」
「お友達がいるところに入ってみたい」
「そのお友達に、どんなことをしているのか聞いてみました?」
「聞いたよ~?でも、よくわからない……ん~……みんなで集まってお菓子食べたりジュース飲んだりするって」
んん?
「他には何もしてないの?」
「え~と……みんなでご飯食べに行く!他のグループと一緒に食べて友達いっぱい作るって!」
合コン的な感じかな~……
「運動系とか文化系とかそういうのもわからない?」
「うんどーけい?」
「あぁ、だから、スポーツなのか、それとも、art なのか……」
「う~ん……ぶしつ?にずっといるみたいだから、スポーツは違う」
「そうですか……うん、あのねマリア――……」
マリアの話では一体何のサークルなのかわからないので、後日マリアの友達を家に招くよう提案してみた。
直接会って話した方が早い。
「OK!誘ってみる!!みんなお店来たいって言ってたから、来てくれるはず!!」
「そうですか。できるだけ俺のいる日にお願いしますね」
「マサも会いたいの!?」
「うん、会いたいですね」
「仕方ないな~、じゃあ、マサがお仕事ない日に呼ぶよ」
「ぜひそうしてください――」
***
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