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ため息の花束 第63話(春海律)

 勢い余った結果、ようやく恋人との2回目のえっちが出来ると思ったわけですが……  一方的にイかされて気を失った挙句、なぜわたしはその恋人に土下座をされているのでしょうか……?  状況が読めないまま、(りつ)は目の前の真樹(まさき)を見た――…… ***    ――少し前、律が目を覚ますと、隣で真樹が膝を抱えて座っていた。   「ん……真樹さん?あの……わたしもしかして、寝ちゃってました……?」 「はい」  真樹が複雑な顔をして律を見る。  え、わたしいつ寝たの!?もしかして……イ……かされた時?ってことは……  思わず後ろに手をやる。  前の時みたいな違和感がない……  えっちしてないってこと!?っていうか、する前にわたしが寝ちゃった感じですか!?    確か裸になっていたはずなのに、今はちゃんと服も着ている。  誰が着せてくれたのかって、そんなの一人しかいない……   「あああの、真樹さん!ごめんなさ――」 「律さん、すみませんっ!!」 「……え?」  なんで……真樹さんが謝ってるの?  っていうか、土下座って……!?  律は、目の前で真樹が土下座をしたのを見て混乱した。  真樹が複雑な目で見てきた理由は、律が寝てしまったせいで最後までできなかったからだろうと思っていたからだ。   「え、あの……真樹さん?どうしてそんな……」 「本当にすみませんでしたっ!!」 「待ってってばっ!!だから、何が!?ちゃんと話してくださいよ。えっちできなかったのはわたしが寝ちゃったせいでしょ!?真樹さんが謝ることなんて――」 「そうじゃなくて……手首……」 「手首?」  真樹が土下座をしたまま、片手を伸ばして律の手首を指差す。  それにつられて、自分の手首を見た。  ん?何だろうこれ……ちょっと赤いっていうか、痣みたいな…… 「それ、俺のせい……俺が強く握っちゃったせいです。すみません!!」 「え、真樹さんが?」 「さっきちょっと乱暴に押し倒したから……」 「乱暴に……?」 「……覚えてない?」 「覚えて?……え、押し倒したって、わたしをですか!?」 「……そうです」  どどどどうしよう……  ぜんっっっっっぜん記憶にないっっっ!!!!!!  ええ~~……目の前で土下座までされてるのに、当の本人に全然身に覚えがないってどういうことですか!?  これ、わたしどうすればいいの!? 「……いやいやいや、ないですって!そんなことされてませんよ!?」 「されたから、手首に残ってるんですよ……」 「でも……あの……真樹さん?あの、えと……あのですね?誠に申し訳ないのですが、わたし全然覚えがなくてですね……だから、とりあえず顔あげてくれませんか?」 「……本当に何も覚えてないんですか?」  ようやく真樹が顔をあげた。 「ほんっっっと~~に覚えてないんですっ!!!もう本当に……土下座までしてもらったのに何だかごめんなさい……」 「そうですか……」 「えと……それで、その……っ」  人間……混乱している時というのは、突拍子もない行動に出たりするわけで……  突然の土下座に完全に混乱していた律は、顔をあげた後も気まずそうに俯いて、大きな身体をシュンっと小さくして落ち込んでいる真樹の姿が、何だか可愛くて……思わず抱きしめていた。 「……律さん?」  抱きしめた瞬間我に返った律は、そのままちょっと固まった。  この後のことは何も考えてませんでしたああああ!!!  すすすすみませんっ……待ってください、今から言い訳考えるからっ!! 「え~と……え~と、あの……全然覚えてなくてごめんなさい……だ、だけど、わたし真樹さんに押し倒されるのは嫌じゃないって言ったでしょ?だから、本当にそんなに落ち込まないで下さい。それと……あの……途中で寝ちゃってごめんなさい……!!土下座するべきなのはわたしの方ですよね……」 「え、何で?」 「だって、結局わたしのせいで……」 「あぁ、いや、最後までしなかったのは律さんのせいじゃないですよ。そうか。律さん覚えてないんだ……え~と……」  わたしのせいじゃない?覚えてないって何が?  律の頭にハテナマークが飛びまくっているのを見て、真樹がちょっと困った顔をして頭を掻いた。 「あ、もしかして、それもわたしが覚えてない時にもう話してくれてたんですか?っていうか、わたしが覚えていない間に一体何があったんですか……」  土下座される程のことって何があったのか……  気になるけど聞くのが怖い……でも気になるぅううう!!! 「あ~……うん、そうですね。え~と――……」  真樹がものすごく気まずそうな顔をして話始めた。 ***

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