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ため息の花束 第64話(村雨真樹)
「――だからね、二人でお互いに触りあいっこするだけでも、十分かなって。俺はもちろん気持ちいいし、律さんも最後までするより身体が楽でしょ?」
真樹は、律にもう一度説明をした。
今度は律が勘違いして泣かないように、ちゃんと丁寧に順を追って……
というか、あの時のも未だに一体どこが泣くツボだったのかわかっていないのだけれど……
「え……じゃあ、後ろはもう使わないってことですか?」
律さん言い方!!
使わないって……物じゃないんだからっ!
まぁ……使うか使わないかと聞かれれば……
「あ~……いや、それは……また抱かせて貰う事もあるかもしれないけど……でも毎回最後までしなくてもいいっていうか……」
「それなら……今日は最後までしてほしい……」
「……え……?」
律が真顔で言ってきたので一瞬耳を疑った。
「ああああの、えと……今日はもう準備してるし……それにさっき真樹さんに前を触られてる時……何か後ろがムズムズして……だから、続き……して欲しいんですけど……ダメ?……ですか?」
ハッとなった律がいつものように顔を赤らめたが、話の内容はさっきよりも更に……
律さんは一体何を言ってるのかな!?
ムズムズって……ダメですか?って……なんなのもう……どんだけ煽ってくるの……っ!?
「~~~……っ!」
真樹は思わず唸りながら両手で顔を覆った。
「ままま真樹さん?あのね、わたし……その、性欲があんまりないから、シたいっていう気持ちに疎くて……でもさっきは挿れてほしいって思ったから、これがシたいって気持ちなのかな~って……どう思います?真樹さんがシたいって思う時ってどんな時ですか?あの――」
「あ~ちょっと待って、ストップストップ!!」
「え?」
照れ屋のクセに、何でそんなところだけ真面目なのぉおお!?
シたい気持ちについてそんな冷静に聞かれても困るんですが……
だって本能的なものだし、好きな人を抱きたいって思う時なんて……好きな人にムラムラした時に決まってるでしょうがっ!!
「え~と……挿れてほしいって……思ったの?」
「え?あ、はい……その……前を触られて……気持ち良かったんですけど……年末に抱いてもらった時のことをちょっと思い出しちゃって……そしたら何だか後ろがムズムズしたっていうか……真樹さんに挿れて欲しいなって思って……」
だから、そんな真剣な顔で言われると、こっちはどんな顔をすればいいのかわからないんですが……
「あのね、律さん。え~と、勉強熱心なのはいいけど……そんな興味本位でやるような内容じゃないし……俺はいいけど、律さん自分が大変なのわかってる?」
いや、えっちに積極的なのは嬉しいけど、その理由がね……?
「わ、わかってますよっ!!それに、大変って言っても……は、初めてじゃないし……だから大丈夫だもん!!だいたい興味本位って何ですかっ!!わたしはただ……真樹さんとえっちがしたいって思っただけなのに……」
律がちょっとしょんぼりして頬を膨らませた。
へぇ~……俺とシたいって思ったんだ……?
っていうか、律さん、それって……シたい気持ちがどんなのかもうわかってるじゃないですか……
あ、俺もうダメだ……
「そうですか……じゃあ、俺もう途中で止まれないと思うんで、頑張ってください……ね?」
律ににっこり笑いかけると、そのまま押し倒した。
「……えっ!?あの、まさ……ぁんっ!――」
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