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おともだち 第86話(春海律)
「こんにちはー!」
マリアの後から元気いっぱいに挨拶をしながら、若者がぞろぞろと入って来た。
以前マリアが連れてきた子もいたが、初めて来た子たちは物珍しそうに店の中をぐるっと見渡していた。
「いらっしゃいませ!奥の席にどうぞ」
奥の広いテーブル席に連れて行くようにマリアに目配せをする。
マリアが笑顔で頷きながら、「こっちよー!」と友達を案内した。
その様子を見ながら、2階にいる真樹にマリアの友達が来たことを連絡する。
真樹は、2階からおりてくるとマリアたちの席に近寄り、さりげなく会話に入って行った。
すごいなぁ……あっという間に馴染んでる。さすが……
律は人数分のコップとおしぼりを用意しながら、最近の大学生がどんな感じなのかわからないとか言っていたわりにすんなり馴染んでいる真樹に感心していた。
「律~!お水くださーい!」
「あ、はい、これ持って行って下さい。注文決まったら紙に書いて持って来てくれますか?」
水を取りに来たマリアに、お盆に乗せたコップやおしぼりとメモ帳を渡した。
律が注文を取りに行ってもいいが、マリアと真樹がいるので任せることにした。
「あ~……じゃ、私カフェオレで!」
「俺は~……レモンティー」
メニューを見ながらそれぞれの飲み物を注文していく。
「あ、ねぇ、パフェとかおいしそう!!私このブルーベリーパフェにする!」
「え~いいなぁ~……じゃあ、私も~……」
女の子たちがデザートメニューに気付いてまた迷い始める。
いつものことなのか、男の子たちは自分の注文をすると女の子たちのことは気にせずに口々に世間話をしていた。
見た感じでは、わりとみんな真面目そうだなぁ……
もっとチャラい感じの子たちが来たらどうしようかと心配していたのだが、どうやらそういう類の子たちではなさそうで少し安堵する。
「律さん、これお願いします。俺はいつものやつで」
ボーっと考えていると、目の前で真樹がメモを振っていた。
「え!?あ、は、はいっ!!」
「大丈夫ですか?ボーっとしてた?」
「あ、ちょっとだけ。あの、すぐにお持ちしますね!」
「一人じゃ運ぶの大変でしょ?俺取りに来ますよ。後で呼んで下さい」
「わかりました。じゃあ、用意できたら呼びますね」
「はい」
真樹がにこっと笑ってさりげなくカウンターに乗せていた律の手を優しくポンポンと撫でてから大学生たちの元に戻って行った。
真樹のおかげでちょっと緊張がほぐれた。
「今日は賑やかだねぇ」
「ひぇっ!?あ、先生。いらっしゃいませ!」
真樹に見惚れていたせいで客が入って来たことに気付かなかった律は急に話しかけられてちょっと慌てたが、聞きなれた声にほっと肩の力を抜いた。
「いつものね」
「はい!今日はマリアのお友達が来てるんですよ」
「なるほど、マリアちゃんの大学の友達かい?いいねぇ」
常連客の『先生』が、この店にしては珍しい若い子たちの賑やかな声に相好を崩した。
「実は、大学のことでお友達に聞きたいことがあって……」
先生に簡単に経緯を話すと、先生が顎を撫でながら軽く唸った。
「サークル活動か……確かにいろんな内容のものがあるからねぇ。マスターが心配するのもよくわかるよ。マリアちゃんは日本のことにはまだ慣れていない部分もあるし、しっかりと確認しておくのは良いことだね」
「そうですよね!?」
マリアはもう大学生で、年齢的には成人だ。
自分でも大学生相手に過保護過ぎるかと思ったが、先生にも賛同してもらって少し気が楽になった。
マリアが日本に来たのは、律と結婚するためだ。
それを叶えてあげることはできないけれど、せっかく遠い日本までやってきたのだから、日本に来て良かったと、彼女にとって有意義な一年間を過ごして貰いたいと思う。
そのためなら、多少過保護だと言われようとも口出しをさせて貰います!
と言っても、結局は真樹さんに頼ってるわけだけど……
わたしってダメだなぁ……マリアのいとことして何も役に立ててない――……
***
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