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第3話

私は彼に、何も言えなかった。 今更何を言ったところで、それは言い訳にすぎないと思ったから。 それに、彼の怒りの理由もよく解ったんだ。 必死で職場にかけあい、在宅ワークに切り替えてまで守ろうとした相手が、のうのうと深夜に帰宅したんだよ。 強かに酔って。 素面じゃあ、なかなか帰る踏ん切りがつかなくて。 かといって、1人で呑みに行く度胸も金もない。 まぁ、そういう訳で、コンビニで買った缶ビールを道端で数本空けたんだが 彼の一声で酔いがスッカリ覚めて。 なけなしのプライドも何もかも吹き飛んでしまった私は。 その場から全力で逃げた。

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