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第4話
「えー!それマジですか?それで、そのまま出て来ちゃったの?」
若者が笑いながら訊いた。
「マジだよ。笑えるよね」
私はジョッキを傾けながら、ウェイターにお代わりを頼もうとした。すると、私達の席の斜向かいに1人佇む男が目に入った。
(え。ちょっと待て……。アレは!彼じゃないかっ!)
「あれ、どうかした?」
呑気にたずねる若者の脚を蹴飛ばす勢いで私は立ち上がった。
「ねえ、どこ行くの?」
「便所っ!」
ああ!ダメだ。
どうしよう?このままだと非常にマズい。
慌てて動いたせいか、はたまた近づく彼の姿がだんだんハッキリ見えはじめたせいか?
一気にアルコールが回ってきたような感覚に襲われて、私は一歩も動けなくなった。
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