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生誕

男は常に母性を求めて女性を愛すると 一緒に雑誌で読んだのは いつのことだったのでしょう それならば僕らは確かに異形だと 語ったあの日は遠くへ行ってしまいました あなたは今 子宮を生まれつきに持った人と 新しい人生を歩もうとしています 親友が欠席したらおかしいだろうと 強がりを言ってみせた僕に 結婚式への招待状が来なかったのは あなたの優しさだったのでしょうか それとも既に膨らんだ花嫁の腹を 僕に見せたくなかったのですか 僕は あなたの愛という名の赤子を 流産したばかりですから 子宮を持たぬ僕に あるいは母性は存在せぬのかもしれませんが それならば今 僕が手首から流す赤い液体が 願わくばあなたを包む羊水となりますように あなたの愛は流れて逝きましたが 僕の身体で形なく漂うあなたへの愛が 今 僕という入れ物を殺して この世へ形をもって 生まれ出ようとしています せめて一輪の花でも持って 祝福してやってください ++++++++++++++++++++++ これは二十代の初め頃のある日、そういや昔、ポエム作ったけど、また書いてみようかしらというので作った、四編の最初。 十代の頃より少し落ち着いておりますが、自殺ネタでございます。 多分これ、『緋色ノ狂気』をもっと分かりやすくしようとして書いたのだと思います。 なのでまたもや、子宮だの羊水という言葉が出てきます。 元ネタとは違って、無理心中せずに愛に殉じて自ら死ぬ、という話に変更しているのですが、次に続くポエムも『緋色ノ狂気』が下敷きで、結局無理心中ネタにしています。 多分、『緋色ノ狂気』が初めて書いたやおい的なポエムだったから、というのもあって、もう少し納得できそうなものに作り替えたいし、カタカナの厨二臭さも消したいし、というのがあったんではあるものの、死ぬ話ばかり書いていたのではありました。

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