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甘い墜落
ここはまるでおとぎの国
大輪の花が咲き乱れてはいなくても
君さえいれば
美しい物語の世界
賛美へはにかんだ微笑みに
幸せを思う
まるで絵本を開くだけのように
簡単に僕の目の前に
幸福の物語が広がる
ソシテ2人ハ幸セニ暮ラシマシタ
けれどもこの幸福は決して
物語のための結末を迎えない
僕らは堕ちて行く
生活のために吐く嘘の裏側へ
でも結末を迎えなければ
僕らの物語は永遠だ
僕らは密かに
底無し沼のような甘い蜜の味へ
抱き合ったまま溺れてしまおう
果てしなく続く
嘘にまみれながら
ピノキオノ鼻ハ元ニハ戻リマセン
君がいつしか僕に黙って手にした
苦い嘘で固めた
世間体という名の絆
もうすぐあの娘と
幸福の物語を築くのだ
僕もいずれは
そうなるのだろうか
純粋過ぎて海の藻屑となった人魚姫は
この場所には相容れない
おバカさんで可愛い赤頭巾ちゃんを騙して
僕らは堕ちて行く
悪イ狼ハ川ノ流レニ沈ミマシタ
ただ堕ちて行くだけの物語は
眩暈にも似た甘美な感情を呼び起こし
死すら否定し
溺れる苦しみを甘受する
ここはまるでおとぎの国
ガラスの靴は
間違った相手を妃に選んだ
嘘にまみれた物語の裏側で
甘く
濃厚な香りのする真実にもがき
溺れ
堕ちて行こう
++++++++++++++++++++++
私は非常にナマモノ属性が強い腐女子なので、このポエムの二人は、古 の時代のやおいにありがちな、二人はヘテロ、一生ヘテロ、でも僕と君の間では性別なんか関係ないんだよ、というパターンのカップルの片割れが結婚しちまったよ、でも男で好きなのは世界でひとりだけだから、君とも愛し合っていくよ、っていう物語を想定して書いたやつです。
この、ヘテロなのにもかかわらず、といって、少なくともバイ、というのを絶対に認めない辺りが、少なくとも昔の、男は君だけしか好きではないんだよパターンの場合は、腐女子が同性愛者に理解があるわけではないどころかむしろ敵、と思われても仕方がない部分、と思うものの、今どきはわりと、少なくとも片割れはゲイが出てくる話のほうが多い様子で、時代は変わったな、って思います。
このポエムの男の片割れは、女との生活だって選び取ってしたことであるはずだし、バイかヘテロでなかったら相当につらい生活になるはずの結婚をそうそう簡単にしなくたっていいのにしているということは、やっぱりその女性も好きだからしたはずなのに、女との生活は「苦い嘘で固めた」ものだということにしているあたりが、私の病なのかもしれない。
多分当時、何かにナマモノ腐れしていたのでしょう。
おとぎ話を入れ込んだあたりで、ここに載せたポエムの中では一番マシだと思ってはいるのですが、でもどこかで、もしかしたらナマモノ腐れの自分がどうしようもない現実にぶつかった時に必要な嘘だから、そう思うのかもしれないです。
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