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再会
微笑むのはやめて
もうそこに
優しさは探せないから
いっそあの日に殺せれば
命ごとぼくのものに出来たならと
心の中に黒いものが蠢く
血塗れの掌を見つめて立ち尽くす僕の
足元にひっそりと横たわる貴方
死の瞬間を迎えるまでは
幾許かは残っていた僕への優しさのために
殉じて逝ける快感
けれども僕は
貴方と彼女の人生に殉じた
僕の独占欲に
貴方と貴方の愛する女 が
後ろ指を差されるなんて
望みではなかった
そうして
自らが死に向かうこともなく
永らえた命の日常に
ふいに訪れた
貴方の微笑みに戸惑う
貴方の横で無邪気に微笑んだあの女 は
さらりと社交辞令を述べて
幸福な光を放つ
穏かな
単なる日曜日のひとつ
ショッピングモール内の
ありふれたひとこま
ずしりとした手ごたえと
暖かな液体
貴方の血に濡れたナイフで
心臓を貫く僕
でもきっと
なにもなかったように
なにもない風景で
挨拶を交わす僕らはとても正しい
後悔をするのなら
初めから愛さなければ良かったのだから
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二十代の後半に書いた三編目。
また少し昔の嗜好に戻っているものの、その辺りは視点になっている人の空想でしかなくて、穏やかな日々をおくるだけになっていますよ、という。
書いている私が、そういうものだよね、と思うに至ったんだと思います。人を好きになったけどうまくいかないからと刃傷沙汰が起こるような世の中は、もうそこは日本ではないのです。
これまたきっと、ナマモノ腐れが現実に打ちのめされる前に作った妄想でもあるんだと思います。殺しちゃわないよね、だってどっちのことだって好きなんだもん、それが一番に心の平穏を保てると思うの、ということでしょうか。
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