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第5話

アンナにとっても、これほど人に興味を示した事はない。もっと、鷲尾を知りたいと思った。 「けど、笑っちゃってゴメン」  アンナは鷲尾の頭を撫でた。 「いや、むしろ良かった、笑い飛ばしてくれて。逆におまえに辛い話させちまって悪かったな」  そう言って、鷲尾は苦笑を浮かべている。鷲尾の思いがけない謝罪に、アンナは慌てて大きな首を横に振った。 「女相手だと緊張しちまうけど、おまえだと凄くリラックスできる。アンナが来てくれて良かった」 「やっぱり鷲尾さん、可愛いよ」 「お、おまえ……! また、そんな事……!」 「どうする? 俺で童貞捨ててみる? できそう?」  そう言ってはみたものの、元々ノンケの鷲尾の初めてが男の自分である事に気が引けた。 「分からない……やってみないと」 「一つ聞いていい? なんで、今更童貞捨てたいの?」  二人はベッド横になると、アンナは鷲尾の腕に頭を乗せた。 「先週、俺は黒宝会の二次団体にあたる、赤城組の若頭を襲名したんだ」 「へぇー、おめでとう」  若頭がどの程度偉いのかアンナには分からなかったが、何となく偉いというのだけは理解した。 「親父に……組長にそろそろ身を固めろって言われてな。どうやら、俺に嫁を用意する気でいるらしい」  その事実にアンナの胸がチクリと痛んだ。 「四十のヤクザが童貞だなんてバレたら、生きていけねーよ。結婚させられる前に、何とか童貞捨てようと思ってよ。デリヘル呼んで何度か試したんだが、どうしても母親と女がダブっちまって……ガキの頃の記憶が蘇っちまう」  そこまで話すと、何か考えるように鷲尾は目を閉じた。 「結婚する気なら、やっぱりセックスは女の人とするのがいいと思うけど」  アンナは体を起こすと、鷲尾を見下ろした。アンナのブロンドの髪が鷲尾の顔にかかり、閉じていた目が開かれた。 「そう、思うか?」 「うん、だって鷲尾さんはゲイじゃないから」 「そうか……」  そう呟き、鷲尾は再び目を閉じた。 「一つ提案なんだけど、俺で練習してみたら?」 「練習?」 「ひとまず、人肌に慣れてみるのはどうかな? 俺は女の人みたいに胸もないし柔らかくはないけど、返ってそれが鷲尾さんにとって都合がいいかもしれないでしょ?」  何となく、鷲尾とこれで終わりになるのは嫌だとアンナは思った。半ば無理矢理丸め込むようで罪悪感を感じたが、それでも鷲尾の事を知りたいと思った。  鷲尾は考えているのか、暫し口を閉ざした。 「そうだな……俺はおまえ相手ならリラックスできるみたいだしな」  鷲尾は起き上がると、射抜くような目を真っ直ぐアンナに向けた。 「じゃあ、早速」  アンナは着ていたカーキのTシャツを脱ぎ捨てた。

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