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Extra edition.2

好みの顔なんだよな―――と、悟志は歩きながら、同僚の整った横顔を眺めた。 昔から、派手さ控えめの上品な顔が好きだ。性格は騒がしいより、穏やかで落ち着いている方がよく、笑い方が淑やかだと尚いい。体つきは抱き締めたら、腕の中にちょうど収まるくらいだが、身長にこだわりはない。 そして、性別にもこだわりはない。 ―――所謂、バイセクシャルだ。 「高木先生、今日、少し飲みませんか?」 「あれ?禁酒はやめたのですか?」 珍しい誘いに悟志は問い返すと、同僚の佐々原瞬はイタズラが見つかった学生のように笑う。 ―――可愛いらしい。 佐々原は顔立ちだけでなく、その他も満たした上に、かなり気も合う。女であれば―――、いや、せめて同僚でなければ、会ったその日に口説き落としていた事は間違いない。 「酔わない程度なら、大丈夫だと思って。」 ふんわりと佐々原が微笑む。 その感じの良い表情もストライクだ。たいへん可愛らしいのだが―――。 「では、ゴハンをメインにしますか。」 「そうしてもらえると。高木先生と飲みに行くのいつぶりでした?はしゃぎすぎないようにしないといけませんね。」 「ゆっくり飲みましょう。大丈夫ですよ。今日は飲ませ過ぎないように見張ってますから。」 悟志がからかうように言うと、前回の酒による失敗を思い出したのだろう。佐々原が愛らしく頬を膨らませて見せる。 「佐々原先生、何時に行けます?」 「6時ちょっと過ぎるくらいですね。高木先生は?」 「それくらいです。終わったら声をかけます。」 「分かりました。じゃあ、また後で。」 2階の渡り廊下で別れて、佐々原の背中を見送った。 不思議なものだ―――と、思う。 佐々原はこんなにも好ましい人物なのに、やはり恋にはならなかった。これほどツボに嵌まる人物に恋愛感情を持てなかったのだ。今後、誰かに恋をできるとは思えない。 ―――まあ、恋しなくて正解か。 好きになっていたら、今ごろ悟志は失恋していたかもしれない。本人は隠しているつもりだが、どうやら、佐々原に恋人が出来たらしいのだ。 相手の見当もついているが、プライベートに立ち入らない方が良いのだろうと理解しているから、尋ねたりはしないが。 佐々原の背中が完全に見えなくなってから、悟志はゆっくりとスマホを取り出した。青弥との朝の会話が少しだけ頭に浮かびはしたが、断ったのだから構わないだろう。 夕食は同僚と食べて帰る―――と、青弥へ簡潔なメッセージを送り、悟志は陸上部が練習しているグラウンドを目指した。

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