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Extra edition.5
ただいま―――と言いかけて、悟志は口を告ぐんだ。
この家から青弥が消えて、既に6日だ。
あの夜、悟志に図星を指され、青弥は逃げるように出ていった。悟志の後ろは守られたのだが、あまり嬉しくもない。
リビングに灯りがないのを認めて、ぐっと胃の縁が落ち込む。待っていても帰ってくるはずがないのは理解しているのに、帰宅する度に裏切られた気持ちになる。
そうして、戻って来るとどこか期待していた自分を思い知らされ、ひとり落ち込む。それをあの日から繰り返していた。
まさか青弥の不在がここまで堪えるとは思わず、元の自分に戻るのをじっと待っている。しかし、少しも治る様子を見せない。
だからと言って、応えてやれないのだから、呼び戻す選択肢はない訳で―――。
困った。
ドサッと悟志はソファに腰を下ろし、向かいの青弥の定位置を静かに見みつめた。
―――ペットロス的なあれか。
ペットとすら認識していなかったはずなのだが、自覚なく愛着が湧いたか。
ぼんやりしていると、ブブブッ―――と、胸元からバイブ音が鳴った。
「あお、や、」
スマホに表示された青弥の名前に動揺する。
ドッと心拍数が上がった。何故、電話を掛けてきたのか考えてみるが、分かるわけはない。
5コールまで画面を見て固まっていたが、留守電に替わる前に、悟志は意を決して通話にした。
「―――はい。」
『あ、すみません。サトシさんですか?』
スマホから聞こえてきた青弥とは違う声に、スッと動揺は鎮まった。再び落胆して、落胆した事にまた落ち込む。
『オレ、アオの知り合いのショウって言います。同じ店で働いてて、怪しいもんじゃないんですけど、』
「はい。大丈夫ですよ。どうかしましたか?」
『アオ、店で泥酔しちまって。帰れって、店長から言われても、サトシさんが迎えに来ないと動かないとか言い張って。』
「は?」
思わず低い無愛想な声が出た。悟志が不機嫌になったと思ったのか、ショウの口調がしどろもどろになる。
『あの、ですね。オレも、迷惑だと分かってるんですけど、できたら、迎えに―――』
「分かりました。すぐに行きます。」
さて、何を着るべきか―――と、悩みながら、悟志は了承の言葉を告げた。
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